SARS-CoV-2に感染したネコの防御免疫と持続的な肺の後遺症

掲載日:2021.03.29

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的な流行が収まる気配が見えず、予防対策として期待されるワクチン接種が各国で始まっています。COVID-19が出現して間もないことから、再感染や後遺症発現のメカニズムやワクチンの持続など不明な点も多く残されています。この原因ウイルスであるSARS-CoV-2は、ヒトのみならず各種動物に自然あるいは実験感染することが報告されています(表)1)。この内、ネコをはじめとしたネコ科のタイガー、ライオン、ピューマに感染し、すべてではないのですが症状を示すことがあり、動物間での伝播も知られています。今般、ネコでの感染実験について研究を主導している東京大学医科学研究所の河岡義裕教授の研究グループから、SARS-CoV-2に感染し回復したネコは無症状にもかかわらず長期間にわたって肺に炎症病変が残り、また一定期間は再感染しないという実験成果が公表2)されましたので、その概要について紹介したいと思います。

まず、ネコに SARS-CoV-2 を感染させた後に、全身の臓器から感染性ウイルスを検出したところ、鼻、気管において感染6日目までウイルスの増殖が見られましたが、肺においては3 日目のみに限局した部分で検出されるに過ぎませんでした。また、消化器や心臓、脳といった臓器からは、ウイルスは分離されませんでした。いずれのネコも臨床症状を示すことはありませんでした。

一方、感染後のネコの肺を病理組織学的に解析したところ、ウイルス感染から無症状のまま回復したネコでは、慢性化した炎症像が4週間という長期にわたり残存することがわかりました(図1)。 また、再感染の成立の有無を調べるために、SARS-CoV-2 に感染し回復したネコと同居感染したネコに、約4週間後に同じウイルスを接種したところ、鼻や気管、鼻洗浄液中においてもウイルスが検出されず再感染しませんでした。しかし、再感染から21日後の個体では、初期感染28日後の個体より炎症の程度は低いものの炎症病変が認められ、肺炎重症度スコアでも確認されました。

以上のことから、SARS-CoV-2に感染したネコは、無症状であるにもかかわらず、肺の炎症による長期的なダメージが見られたことから、ヒトにおける後遺症でも、感染による炎症が長期的に続いている可能性があると著者は述べています。また、SARS-CoV-2に感染して回復したネコは再感染しなかったことから、少なくても4週間は「防御的免疫記憶」が成立したことを示唆したとも述べています。いずれにしても、ネコは感染して症状がなくても肺に強いダメージを受けることから、できる限り感染させないようにすることが重要なようです。なお、感染したネコからヒトへ感染するとの知見は今のところ全く得られておりませんので、ネコからの感染を過度に心配する必要はないと思われます。

 

1)OIE: Infection with SARS-CoV-2 in animals, OIE Technical factsheet, September 2020

https://www.oie.int/fileadmin/Home/MM/EN_Factsheet_SARS-CoV-2_v8_final.pdf

2)Chiba S, Halfmann PJ, Hatta M, et al.: Protective Immunity and Persistent Lung Sequalae in Domestic Cats after SARS-CoV-2 Infection

Emerging Infectious Diseases(オンライン版)
https://doi.org/10.3201/eid2702.203884

https://www.ims.u-tokyo.ac.jp/imsut/content/000003992.pdf (プレスリリース)

 

 

 

 

 

https://www.ims.u-tokyo.ac.jp/imsut/content/000003992.pdf