AMR対策アクションプラン成果指標の達成度

掲載日:2021.01.25

世界的な医療における薬剤耐性菌の蔓延を背景に、2015年にWHOの抗菌薬耐性グローバルアクションプランが採択されました。それに引き続き、2016年にわが国でも抗菌薬耐性(AMR)対策アクションプランが制定されました。今回のアクションプランの特徴としては、医療分野及び動物分野で数値目標を掲げた成果指標が設定されたことです。2020年度は最終年となり、年度末に内閣府により成果指標の達成度が評価されることになっています。そこで、動物分野における現時点での達成度について検討し、課題についても考えてみたいと思います。

まず成果指標を再確認すると、表に示したように家畜で最も使用量が多く、多くの家畜由来細菌で耐性率が高いテトラサイクリン系薬に対する大腸菌の耐性率を33%以下にするというものです。また、医療上重要な抗菌薬である第三世代セファロスポリン系薬とフルオロキノロン系薬に対する大腸菌の耐性率をG7各国と同水準にするというものです。

そこで、2012年から2018年までの健康家畜由来大腸菌の耐性率の推移を見てみました。図では牛、豚及び鶏由来大腸菌について示しており、黒線が家畜全体での耐性率の推移です。まずいえることは、いずれの抗菌薬の耐性率も動物種に係わらず年代ごとに大きな変動がなく横這い状況にあるということです。また、牛由来大腸菌の耐性率は豚や鶏に比べて概ね低く推移しています。この理由として抗菌薬は病気の牛に対して個体投与されるのに、豚や鶏に対しては郡単位での投与であることと関連するものと考えられます。テトラサイクリン系薬については豚、鶏由来大腸菌で目標値を超える耐性率であり、全体として目標値に達することは困難であると思われます。一方、第三世代セファロスポリン系薬とフルオロキノロン系薬に対する大腸菌の耐性率は、開始時点以前からG7各国と同水準であり、2020年でも維持していますので目標は達成したことになります。ただ、鶏由来大腸菌に対する耐性率が2012年から目標値を超えていることが気になります。

ではこの期間における抗菌薬の使用状況を調べてみると、図に示しているようにテトラサイクリン系薬、第三世代セファロスポリン系薬、フルオロキノロン系薬のいずれもが横ばい状況であることが分かります。薬剤耐性菌の増加と抗菌薬の使用量に正の相関関係があることが知られています。このことを踏まえれば、抗菌薬の使用量の変化がないことから、当然、耐性率の低減化も望めないものと考えます。G7各国のAMRアクションプランを見てみると、日本以外のすべての国で成果指標として抗菌薬の使用量の低減化を組み込んでおり、中には具体的な数値目標を設定した国もあります。したがって、アクションプラン期間中に積極的に抗菌薬使用量の低減化を図る対策が取られなかったことが、成果指標を達成できないかった理由であると考えます。同じAMR対策アクションプランで医療分野では野心的な抗菌薬の使用量の低減化目標を設定しており、達成できなかった項目が多いものの、動物分野でも次回のアクションプランでは具体的な抗菌薬の低減目標値を設定することが望まれます。