医学生の抗菌薬に関する意識調査

掲載日:2020.12.21

薬剤耐性菌の出現要因として重要なのは、抗菌薬の過剰使用と誤用であると言われています。そのため抗菌薬の適正使用は、医療における薬剤耐性(AMR)対策としても基本中の基本となります。抗菌薬のもっとも多い使用者であり、一般市民に正しい抗菌薬の使い方を指導するのは紛れもなく医師です。そのため医学生は大学教育の中のさまざまな専門科目で抗菌薬や薬剤耐性菌に関する知識を得て、専門家として世の中に出ているはずです。では医学生は抗菌薬について、どのような認識を持っているのでしょうか?そこで今回は、医学生の抗菌薬に関する意識調査結果が公表されましたので紹介したいと思います1,2)

まず本題に入る前にベースラインとして一般市民の抗生物質に関する意識調査結果から紹介しましょう。国立国際医療研究センターの大曲典夫先生が取りまとめたものを図1に示しました1)。回答者の46.6~52.4%は抗生物質がウイルスに効果があると答え、40.6~43.9%が風邪やインフルエンザなどのウイルス感染症に抗生物質が効果的と考えているようです。前者の質問の答えより、後者の回答率が低下しているのは、風邪やインフルエンザがウイルス感染症であるとの認識がある方がいることを反映したものと思います。なお、抗生物質を不必要に使用すると効かなくなるとの薬剤耐性への認識が60%を超える一般市民にあることは、これまでの普及啓発活動の反映と考えたいと思います。

一方、医学生の意識はどうでしょうか?これまではこのような調査が実施されなかったか、実施されても内部資料として使われ外部に公表されていませんでした。今般、Hagiyaら(2020)は岡山大学医学部の学生を対象とした調査成績を公表しました1,2)。調査は2019年9月から2020年2月に記述式のアンケート調査を実施したものです(図2)。まず抗生物質がウイルスに効果があるかを尋ねたところ、1年生では64.6%がYesと答えており、一般の方の答えよりも間違った認識を多く持っています。まだ医学教育を受けていないためとも考えられます。2年生になると45.6%で一般の方と同じレベルになり、専門科目も増えていく3年以降は、その値が下がっていきました。ただし、最終学年である6年生でも7.8%がYesと答えていることに驚きます。次にほとんどがウイルスを原因とする普通感冒に対しては、4年生まで一般市民と同じレベルの答えで、5年生、6年生は23.8%と26.2%と随分と低くなっています。しかし、高学年の20%以上の学生が効果ありと答えたのは、細菌による二次感染などを考慮したものなのでしょうか?さらに明確なウイルス感染症であるインフルエンザに効果があるかとの問いに対しては、低学年(2年生)から一般市民より低くなっています。ただし、6年生でも9.7%の学生は効果があると考えていることに正直驚きました。また、現在、医療分野で盛んに取り組み、広報活動も盛んな薬剤耐性対策アクションプランについて、残念ながら学年を通じて非常に低い認知度であることも分かりました。

以上の調査結果は現在の医学教育の中で正確に抗菌薬の有効性を理解していない学生がいることを表しており、医学教育を充実させるとともに、さらなる普及啓発活動を進める必要性を示しています。ただし、今回は1大学の調査成績で、これをもって全国の医学系大学を一括りにすることは困難であると考えられます。今後のさらな調査を期待したいと思います。

 

1)薬剤耐性ワンヘルス動向調査検討会:薬剤耐性ワンヘルス動向調査年次報告書2020(案)

https://www.mhlw.go.jp/content/10906000/000691720.pdf

2)Hagiya H, Ino H, Tokumasu K, et al., Antibiotics literacy among Japanese medical students, J Infect Chemothr 26:1107-1109, 2020.