市販のかぜ薬はウイルスを殺しません!

掲載日:2020.11.30

これから本格的な冬の到来で、例年流行する風邪(かぜ)のシーズンとなり、市販のかぜ薬を服用される機会が多いと思われます。今年は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の蔓延により、通院を控える傾向にあることから、通常より多くの方が服用される可能性があります。通常かぜ薬といわれる総合感冒薬は、かぜの諸症状に対する合剤の医薬品であり、薬局で購入できる大衆薬(一般用医薬品)として販売されています。かぜによる頭痛、発熱、のどや筋肉の痛みや、咳、くしゃみ、鼻水、鼻づまりなどの症状に対して、解熱鎮痛剤、鎮咳去痰剤、抗ヒスタミン剤、カフェインなどが配合されています。市販のかぜ薬の多くは第二類医薬品といって、積極的な情報提供は努力義務であり、基本的に誰でもが薬局で購入できることから、医師による処方される投与量より低く設定され、安全性が認められている20~30年以上前に開発された有効成分のみが認められています。日本では1950年代から販売されており、皆さんが聞き覚えのある様々な商品名で流通しています。中には半世紀以上にわたって販売されているものもあり、いかに皆さんに使われていたかを示すものです。

かぜは80~90%がウイルスによる上部気道感染症です。原因ウイルスは、インフルエンザウイルスと思われがちですが、かぜの10~15%程度でしかなく、ライノウイルス、コロナウイルス、アデノウイルス、パラインフルエンザウイルス、RSウイルス、エンテロウイルスなど多種多様なウイルスが関与します。ここでかぜ薬について武田コンシュマーヘルスケア(株)が実施した興味あるアンケート結果をご紹介したいと思います。インターネットのニュースサイトでも紹介されましたので、読まれた方も多いかもしれません(https://news.yahoo.co.jp/articles/17a44e5e2372ed603a3606a3090211df19bb9b7d)。それは、「かぜ薬はかぜのウイルスをやっつけてくれるのか?」というものです。皆さんはどのように思っていたでしょうか?図1を見ていただけるとお分かりのように、「基本的にすべてのかぜ薬はウイルスをやっつける」、あるいは「一部のかぜ薬はウイルスをやっつける」と、かぜ薬がウイルスを殺すと考えている方が実に65%いたのです。市販のかぜ薬には、先にも示したようにウイルスを殺すような抗ウイルス剤は全く含まれていないので、ウイルスを殺すことはできないのです。しかし、かぜ薬を服用すると身体が楽になったり、治ったと感じたりすることがあります。これはあくまでウイルスを殺したためでなく、かぜの諸症状に対して効果を発揮したためです。かぜに対する対処法としては、基本的に自身が持つ自然治癒力を十分に発揮させるために、栄養と睡眠を十分にとって休養することが最も重要なことです。ただし、かぜ薬を適切に使用すると、早くに症状を抑えてかぜを長引かせずに治癒することができますので、上手に使用することも大事です。かぜ薬を服用しても症状の改善が見られない場合は躊躇することなく医師の診察を受けることをお勧めます。なお、詳しいかぜの対処方法については、「自分にあったかぜの治し方について」(https://takeda-kenko.jp/tokushu/kaze/)が参考になります。

さて、かぜの原因は80~90%がウイルスであることを先に述べました。残りは細菌やマイコプラズマ、クラミジアなどのウイルス以外の微生物になります。抗生物質は細菌の増殖を抑えたり、細菌を殺したりする薬です。したがって、ウイルスが主な原因であるかぜには、ほとんどの場合、抗生物質は効かないはずです。ところが、AMR臨床リファレンスセンターが実施したアンケート調査(https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000571551.pdf)によれば、回答者全体の半数程度が、かぜを理由に抗生物質を服用し、図2で示す通り約4割の回答者が、かぜやインフルエンザに対して抗生物質が有効であると答えていました。年が変わっても同じ傾向でしたので、一般の方々の共通認識であろうと思われます。一方、不必要に抗生物質を使用しているとその抗生物質が効かなくなるとの認識を7割弱の方がお持ちのようです。しかし、自らの判断で治療中の抗生物質を途中で止めたり、飲む量や回数を加減したことがあると答えた方が約2割おり、自宅で保管している抗生物質を自分で使ったと答えた方が7割以上もおりました。薬剤耐性についてある程度理解している方が多かったのに残念な結果でした。多分、知識が曖昧であるものと推察できます。かぜに使用した抗生物質が有効であったのは、多くは抗生物質と同時に処方された症状を緩和する薬の影響であり、決して抗生物質がかぜに有効ではないことを理解する必要があります。なお、関連情報をコラムにも記載していますのでご一読ください(https://cvdd.rakuno.ac.jp/archives/2623.html)。

以上のかぜ薬と抗生物質の話のように、医薬品に関する情報が国民の皆さんに正確に伝わっていないことを実感します。現在、薬剤耐性菌や抗生物質については、図3のように様々な媒体を利用して、できるだけ易しく、正確な知識を皆さんに伝えようと努力しています。今後も以前にも増して普及啓発活動を強化していく必要性を感じています。なお、AMR臨床リファレンスセンターのホームページには、正しい情報が楽しく理解できるように工夫されており、是非ともアクセスしていただきたいと思います(https://amr.ncgm.go.jp/information/campaign2020.html)。

                 

図1.かぜ薬に関するアンケート調査結果

 

 

 

図2.抗生物質に関するアンケート調査結果

 

 

 図3.AMR対策用ポスター