動物用医薬品の安全性確保のための制度

掲載日:2020.11.09

今さら企業に勤務する方にお知らせする内容ではないのですが、もしかして新人の方が読んでいるかもしれませんし、知識があやふやの方もおられるかもしれません。そこで私が学生に講義するスライドをもとに、耐性菌対策が進められている中、今一度動物用医薬品の安全性確保のための制度について、確認の意味で紹介したいと思います。

図1に制度の全体像を示します。家畜に用いる動物用医薬品は薬機法14条により品質・有効性・安全性・残留性を審査し承認を得なければなりません。承認に当たっては臨床試験や残留試験などのデータに基づいて厳密な審査を受けることになります。また、薬機法83条の4において、適正に使用されなければ対象動物の肉、乳その他の食用に供される生産物に残留し、人の健康を損なうおそれのあるものが生産されるおそれのあるものについては使用基準が定められています。具体的には使用規制省令により、家畜に使用する動物用医薬品が承認されるときに使用動物、用法及び用量、使用禁止期間が定められています。しかし、診療上獣医師が必要と判断した場合は、使用基準に準拠せずに使用することができますが、農家に対して出荷制限期間指示書を発行する必要があります。この場合、データは全くありませんので使用した獣医師が自分の判断で出荷制限期間を設定する必要があります。2倍量投与したので使用禁止期間の2倍というほど単純でないことから、できるだけ長くに設定するよう学生に指導しています。理由は畜産物に残留が明らかになった場合、3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金に処し、またはこれを併科すると罰則が適応されるからです。医薬品の適応外使用は残留性のみならず、耐性菌の選択圧にもなることも留意すべきです。

さらに、①獣医師の専門的な知識と技術を必要とするもの、②副作用の強いもの、あるいは③病原菌に対して耐性を生じやすいものは要指示医薬品に指定され、その使用に当たっては獣医師の特別な指導が必要とされています。例えば抗菌薬は③に該当しますので、一部の例外はありますが殆どが要指示医薬品になり、専門的な知識を持つ獣医師の指導がなければ使用することができないのです。要指示医薬品制度をまとめたのが図2になります。獣医師でない農家が勝手に抗菌薬を使用することができないのです。要指示医薬品は獣医師法の要診察医薬品に該当するため、獣医師が指示書を農家に発行する場合は獣医師法18条により獣医師が自ら診察することが求められています。感染症は時間単位で変化しますし、それにより使用する抗菌薬も異なることから、獣医師の専門的知識は必要不可欠であり、農家からの電話で自ら診察しないで指示書を発行することなどもっての外なのです。

以上、動物用医薬品の安全性確保のための制度を説明してきました。獣医師に対しては大学の講義やセミナーなどで繰り返して指導してきている筈なのに、動物用医薬品の不適切な販売で摘発される獣医師がいることも事実です。例えば図3に具体的な摘発事例を示しました。事例1は医薬品販売業の許可を受けずに、要診察医薬品を6回にわたり対象動物を診察せずに販売したものです。事例2は事例1のつじつまを合わせるためと思われますが、診療行為をしていないにも係わらず、診療簿に虚偽の記載をしたものです。これらは獣医師の信用を貶める行為であるとともに、国民の間でいまだに獣医師の社会的地位が医師ほど高まらない理由に思えてなりません。社会的に認知される獣医師の育成に努力している大学にいる身としては忸怩たる思いをしています。