動物医療センターでの抗菌薬の使用状況

掲載日:2020.10.26

これまで紹介しているように抗菌薬の誤用と過剰使用が薬剤耐性菌の選択・増加要因として重要とされています。したがって、効果的な薬剤耐性菌対策を構築するに当たって、抗菌薬の使用量を把握することが重要となります。ここでは2019年度の酪農学園大学附属動物医療センターにおける抗菌薬の使用状況をお知らせしたいと思います。

 

  • 伴侶動物医療部門

今回はセファロスポリン系、カルバペネム系、テトラサイクリン系とフルオロキノロン系について調べました。まず、注射剤の使用量を図1にまとめました。第一世代セファロスポリン系のcefazolinが最も多く、全体の94.4%を占めました。cefazolinを除くと、imipenemやenrofloxacinが続きました。これらの抗菌薬は医療上重要とされる抗菌薬です。

一方、経口剤を見ると図2のようになります。第一世代セファロスポリン系のcefalexin が最も多く、全体の84.7%を占めました。cefalexinを除くと、doxycyclineやenrofloxacinが続きました。経口剤は注射剤の2.5倍使われていました。

以上をまとめてみると、第一世代セファロスポリン系が8割以上を占めており、医療上重要な抗菌薬の使用量もそれほど多いものでない状況が分かりました。ただし、一部の注射剤を外用剤として適応外使用していることも分かりました。

 

  • 生産動物医療部門

最も使用量が多かったのが第一世代セファロスポリン剤であるcefazolineで全体の61.4%を占め、その全てが乳房内注入剤でした(図3)。ついで動物用抗菌薬として最も使用量の多いoxytetracyclineで19.1%でした。また、医療上重要と考えられるフルオロキノロン剤については、marbofloxacinとenrofloxacinを合わせて8.4%でした。同じく医療上重要な第三世代セファロスポリン剤であるceftiofulの使用量は非常に少ないものでした。一方、人体用抗菌薬として使用目的は分かりませんが、cefalexinが8.8%使われておりました。

今回の生産動物に対する調査成績はほぼ適正な抗菌薬の使用が行われていることが伺われます。ただし、人体用抗菌薬の適応外使用も認められることから、今一度適正使用を考えることが必要に思います。

 

以上、動物医療センターでの抗菌薬の使用状況を説明しました。ほぼ適正な抗菌薬の使用が行われていることが分かりました。現在、農林水産省では2016年に制定された薬剤耐性対策アクションプラン2016-2020に基づいて、抗菌薬の慎重使用(prudent use)の普及啓発活動を推進しています。各獣医療施設においても抗菌薬の使用状況を把握し、抗菌薬の適正使用をお願いしたいと思います。

なお、ご承知と思いますが、農林水産省では薬剤耐性菌対策に係るさまざまな媒体を作成し、公表しています。是非とも活用していただきたいと思います。

(1)薬剤耐性対策の動画

(2)(https://www.maff.go.jp/j/syouan/tikusui/yakuzi/amr_movie.html

抗菌薬の慎重使用に関するパンフレットや治療ガイドブック

https://www.maff.go.jp/nval/yakuzai/yakuzai_p5.html