ペットビジネスが花盛り

掲載日:2020.10.05

世の中新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の蔓延で経済が停滞しているとの報道が連日なされています。COVID-19はいろいろな対策が取られたとしてもすぐに無くなることはなく、ウイズコロナでの新たな社会体制を構築していく必要があります。このような経済状況であるものの、ペットビジネスは好調であるようです。公表されたデータによると、ペット関連総市場規模は2017年度の末端金額で1兆5,193億円、2018年度で1兆5,422億円、2019年度で1兆5,629億円、2020年度で1兆5,833億円と僅かながら増加傾向にあることが報告されています。以前のペットビジネスと言えば、医薬品を始めとする獣医療関連とドライタイプのペットフード位しかありませんでした。しかし、現在はさらに進化して様々な分野でペット関連商品が実用化されています。その背景としてペットの平均寿命の延びがあり、ペットが如何に健やかな毎日を過ごし健康寿命を伸ばすかが重要な課題になっていることにあるように思えます(https://cvdd.rakuno.ac.jp/archives/3265.html)。また飼い主の多彩な生活スタイルにペットとの共生生活を如何にフィットさせるかとの視点で新たな商品開発がなされています。

では新たなペットビジネスについていくつかご紹介しましょう。まず健康ビジネスから見てみると、ペットフード関連では従来のドライタイプや缶詰などの普通食に加えて糖尿病や腎臓疾患向けの様々な医療用ペットフードが開発されています。また、生食用の動物由来ペットフードも販売されているようです。さらに、ヒトでも盛んに販売されている食餌から不足成分の補給ということでいろいろなサプリメントが販売されています。最近ではペット用の飲料水の生成器も販売されているようです。ただ、全ての製品について科学に基づく有効性や安全性が図られているかといえば必ずしもそうとも言い切れません。品質についても然りで、米国で販売されたドックフードの缶詰に動物の安楽殺用医薬品が混入し死亡例が発生したとの報道がなされています(https://www.cnn.co.jp/business/35114895.html)。このようにペットフードが広く販売されるようになって、中には不良品もありペットの生命を脅かす事例も多く報告されるようになりました。そのことから、農林水産省と環境省では2009年6月1日にペットフードの安全性の確保を図るため、「愛がん動物用飼料の安全性の確保に関する法律」(ペットフード安全法)を施行しました(https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/petfood/outline.html)。これによりペットの健康に悪影響を及ぼすペットフードの製造、輸入または販売が禁止されました。しかし、最近のペットフードの進歩に法律により全て対応できていないことも事実です。日本でも法律の規制から外れていたイヌ用トリーツ(おやつ)のサルモネラ汚染によってイヌに健康被害が発生したことをコラムでも紹介したところです(https://cvdd.rakuno.ac.jp/archives/3175.html)。

さらに高度獣医療の進歩によりペットの寿命が延びてきており、介護を必要とするペットも増えてきました。そこでペットの介護施設やサービスを提供する会社も出現しています。Webで検索しても全国に多数の老犬や老猫ホームの情報が閲覧できます。この分野は必要性も高く今後も伸びが期待される分野です。しかし、その歴史は浅く介護理論や技術など発展途上の分野でもあります。また、ペットの介護に係るスタッフの資格に関しても民間資格であり、介護技術のレベル向上と平準化のためにもヒトの介護福祉士のような国家資格化が求められます。

一方、最近のAI(人工知能)やIoT(Internet of things)をペットビジネスに結び付けたペットテックという分野も各段の進歩が見られ、今後のペットビジネスを大幅に発展させる可能性を秘めています。具体的にペットテック関連商品としてポピュラーなものに、「見守りカメラ」があります。飼い主が就業中にもペットの行動を遠隔で確認できることになります。さらに最近ではAIによりカメラがペットの動作を認識して、飼い主のスマートフォンに通知され、常に画面を見ていなくてもコミュニケーションをとるタイミングをAIがサポートしてくれるようです。ペットの行動にAIが活用されビックデータが集積されてくると、これまでの経験的なペットのしつけに関する技術にも変化をもたらし、動物行動学そのものの内容にも影響が出てきそうです。すでに飽和状態とも言われますが、遠隔操作で自動給餌できる自動給餌器も飼い主の生活スタイルに合わせた製品と言えるでしょう。給餌のみならず附属したカメラでペットの様子が観察できることもヒットにつながったようです。また、ペットテックをもとに発展する製品として、ペットの健康管理に関するものがあり、すでに実用化されています。例えばネコは素因として泌尿器疾患にかかりやすい動物であることから、排尿時に自動で体重や尿の量・回数を記録していくことで健康管理に役立たせようとする製品が販売されています。複数のネコを飼育していてもAIを使った顔認証システムを利用して個別のデータを集めることができるということです。

以上、断片的な情報ですが、ペットビジネスが急成長を遂げていることを感じていただけたでしょうか?ただ先にも述べましたが、ペットフードについても法的規制が対応できていない部分も多々あります。様々な製品が開発されて利用し、ペットの健康が向上し健やかな毎日を過ごすことには異論のないところです。しかし、市販される全ての製品が有効で安全ということまで言えないということも理解する必要があります。製品の選択権は飼い主にありますことから、さまざまな情報を収集し、自分の大切なペットがより良い生活を過ごせるように適時利用していただきたいと思います。また、ペットテックに関してはAIによる様々な情報をどのように獣医学に結び付けていくかは獣医師に課せられた課題でもあるように感じています。得られた情報が有意義に活用されるようにさらなる研究が求められているようです。