タバコはペットの健康にも影響する

掲載日:2020.09.28

タバコの弊害が言われて久しく喫煙する国民が減少していることは確かなようです。JTの2018年全国たばこ喫煙率調査によると、成人男性の平均喫煙率は27.8%で、昭和40年代以降のピーク時の83.7%と比較すると、約50年間で56ポイント減少したことになります。しかし、日本は今なお世界的に喫煙率の高い国になっています。なお、成人女性の平均喫煙率は8.7%でほぼ横ばいの状況です。健康増進法に基づき制定された「健康日本21」によると、タバコは肺がんをはじめとして喉頭がん、口腔・咽頭がん、食道がん、胃がん、膀胱がん、腎盂・尿管がん、膵がんなどの多くのがんや、虚血性心疾患、脳血管疾患、慢性閉塞性肺疾患、歯周疾患など多くの疾患、低出生体重児や流・早産などの妊娠に関連した危険因子であるとされています1)。喫煙する本人はそれぞれの責任で喫煙するので自覚を促すしかないのですが、問題となるのが受動喫煙で喫煙者の傍で望まないにも係わらず間接的に喫煙させられることです。2018年7月に健康増進法の一部を改正する法律が成立し、規制措置を伴う受動喫煙対策が2020年4月1日から全面施行されたことはご承知の通りです2)。しかし、この法律ではあくまで人間を対象としたものであり、ヒトと非常に近くで生活するイヌやネコの健康は考慮されていません。先の喫煙率とペットの飼育率から考えて、相当数のペットが飼い主の喫煙による影響を受けていると思われます。そこで今回はタバコの弊害を考えるともに、ペットの健康への影響についても考えたいと思います。

日本では旧来からタバコは紳士の嗜みとされるとともに、緊張やストレスの緩和などのメリットが強調されてきました。また、タバコには国税の「たばこ税」と「たばこ特別税」、地方税の「たばこ税」がかかっており、1本当たり13.2円、1箱当たり264.9円の税負担となっています。国も地方も緊縮財政になっていますから、タバコにかかる税金は予算の貴重な財源にもなっているのです。このことが日本の禁煙対策にブレーキをかけていると言ったら言い過ぎでしょうか?例えばタバコのパッケージを見ると、日本では30%の面積に健康被害に関する文章を記載することがたばこ事業法で規定されています。しかし、海外では写真入りの警告表示でタバコの害を訴えています(図)。写真そのものはショッキングなもので目を背けたくなるのですが、医療関係者による研究班で実施したアンケート調査では、タバコ警告表示に写真を使うことを多くの日本人が支持し、喫煙を抑制する効果は文章の警告より優れているとしています3)。また海外の写真に添えられた文章をみると、タバコと健康被害との関連を断定的な表現で記載しているに対し、日本の警告文は科学的な事実を淡々と述べているだけで、国が積極的に国民に禁煙を勧めるようには見えません。これでは喫煙者もなかなかタバコを止めようと思わないように見えます。

このようなタバコをめぐる状況ですが、喫煙者の傍で生活するペットの受動喫煙による健康被害はなおざりになっているように感じます。ペットの受動喫煙による健康被害に関する公表論文をレビューした報告4)によると、喫煙するペット所有者のネコの口扁平上皮がん(Bertonら,2003)や悪性リンパ腫(Bertonら,2002)の罹患リスクが高いことが報告されています。また、高濃度の受動喫煙に暴露されたイヌのアトピー性皮膚炎に罹るリスクも高いことが報告されています(Kaら,2014)。ペットの受動喫煙の特徴として、サイズが小さいほど影響が大きいことや、タバコの有害成分が床やソファーに集積するため、体高が低いペットほど影響が大きいとされています。さらに鼻が短い犬種(パクなど)では肺がんが、鼻の長い犬種(コリー種など)は鼻腔がんなど、鼻の形状で発生するがんの種類が異なることも指摘しています。

以上のように飼い主が喫煙者なら、受動喫煙によりペットも健康被害を受けることは明らかです。したがって、喫煙を止めることは最善の方法ですが、喫煙を止められない場合は、ペットの健康を守るために、ペットから離れた場所で喫煙することや、換気装置があったとしてもペットの周りで喫煙することは止めましょう。タバコを含む廃液にペットが触れた場合は、毒性症状が発現する前に獣医師の診察を受けましょう。健康増進法の改正により受動喫煙対策が強化されたことを契機にペットの健康を守るためにも禁煙がさらに進むことに期待したいと思います。

 

1)厚生労働省:健康日本21(たばこ)

https://www.mhlw.go.jp/www1/topics/kenko21_11/b4f.html

2)厚生労働省:受動喫煙対策

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000189195.html

3)鈴木一夫:たばこ警告表示に関するアンケート調査結果報告書

http://square.umin.ac.jp/nosmoke/data/2012packagewarning.pdf

4)川俣幹雄ほか:ペットにも受動喫煙による健康被害は存在するか、またその特徴は何か?-システマティック・レビューの成績から-, 第11回日本禁煙学会学術集会, 2017年11月4~5日(京都)

https://www.menicon.co.jp/company/csr/nosmoking/20171104/poster.pdf