ペットにおける新型コロナウイルス感染症に対する大規模な疫学調査

掲載日:2020.08.17

これまでの自然感染例や実験感染例の報告から、イヌやネコが新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に感染することが明らかになってきました。しかし、イヌやネコに対する大規模なPCR検査や抗体検査などの疫学調査は極めて少ないのが現状です。今般、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が蔓延し、感染者数、死亡者数が世界でも有数のイタリアで実施されたイヌとネコの大規模な疫学調査成績が公表されましたので紹介したいと思います。

調査期間は2020年3月から5月にかけて実施されたもので、動物病院に健康診断に訪れた外見上健康なイヌ540頭、ネコ277頭を対象としました。この中にはCOVID-19の発生が最も多いLombardy地方で飼育されたイヌ476頭とネコ187頭が含まれています。まず、PCR検査の結果ですが、呼吸器症状を示すイヌ38頭とネコ38頭が含まれていましたが陽性を示す動物は全くいなかったことから、活発なCOVID-19の感染は起こっていないと考えられました。次に血清中の中和抗体の保有状況を調べました。背景情報が明らかなイヌ180頭の内、COVID-19感染のある世帯で飼育されていたイヌ47頭中6頭(12.8%)は抗体を保有し、COVID-19感染のない世帯では133頭中2頭(1.5%)のみが抗体陽性でありました。統計学的に解析したところ、COVID-19感染地区で飼育されるイヌの抗体保有率が有意に高いことが分かりました。また、オスの抗体陽性率は8.4%でメスの1.9%に比べ有意に高かいことが分かり、オスが感染しやすいことを示しています。しかし、年齢区分別の抗体保有率には差がありませんでした。一方、ネコではCOVID-19感染のある世帯で飼育されていることや、オスはメスに比べ抗体保有率が高い傾向にありましたが、統計学的な有意差は認められませんでした。さらに10,000人当たりのCOVID-19感染者数と地方ごとのイヌやネコの抗体陽性率は有意に相関することが分かりました。

以上の調査成績は、まずPCR検査結果からヒトのCOVID-19感染が多い地方で飼育されるイヌやネコであっても容易にヒトから感染しないことを示しています。しかし、抗体検査結果からCOVID-19感染が認められた世帯で飼育するイヌやネコについてはヒトから感染の可能性があることから、患者との接触を避けるなどの基本的な対策が必要なことも示しています。特にオスはメスに比べて感受性が高いことから注意が必要です。なお、COVID-19については動物での詳細がまだまだ明らかとなっていないことから、米国疾病対策センター(CDC)は以下のことを推奨しています(https://www.cdc.gov/media/releases/2020/s0422-covid-19-cats-NYC.html)。

 

■飼い主に感染が認められた時は、飼い主以外の方にペットの世話をしてもらいましょう。

■撫でる、寄り添う、キスや舐められる、食べ物や寝具を共有するなどのペットとの濃厚な接触を避けましょう。

■ペットの世話をしなければならない場合は、接触する前後に十分に手を洗って下さい。

 

Paterson EI, et al.: Evidence of exposure to SARS-CoV-2 in cats and dogs from households in Italy. Bio Rxiv, July 23, 2020.     doi:https://doi.org/10.1101/2020.07.21.214346.