狂犬病ワクチンは動物病院で打ちましょう!

掲載日:2020.06.29

犬を飼うことに伴う飼い主の責務として、狂犬病予防法により犬の登録と狂犬病ワクチンの接種が義務づけられていることをすでにコラムでも紹介しました(https://cvdd.rakuno.ac.jp/archives/2481.html)。具体的には犬(生後90日を経過)を取得した日から30日以内に市町村長に登録を申請しなければなりません。また、犬の所有者は狂犬病の予防接種を毎年1回受けさせなければならないとされています。もし、この条文を守らなければ、30万円以下の罰金に処するとの罰則規定も定められています。実際に多頭飼育など犬の飼い方にも問題があったのですが、ワクチン未接種で書類送検された事件が複数報道されています。このように法律でワクチン接種が規定されているにも関わらず、6月24日の産経新聞によれば、狂犬病予防法を所管する厚生労働省によると、ワクチン接種率が登録頭数の7割にとどまっていることを報道しています(https://news.yahoo.co.jp/pickup/6363386)。法律に違反して登録申請していない未登録犬を加味すると日本全体で4割程度の接種率ではないかとの見方も紹介しています。日本には狂犬病がないとか、室内飼育で他の犬と接触しないとか、副作用が怖いなどという飼い主の気持ちと共に、科学者による狂犬病ワクチン不要論を背景に、飼い主が勝手に自己判断で法的な責務を放棄していることを危惧しています。

今月13日に愛知県の病院で外国籍の30代の男性が狂犬病により死亡しました。男性は昨年の9月ころにフィリピンで犬に左足首を咬まれ、今年の5月に足首や腰の痛みや水を怖がるなどの症状を訴えていたようです。患者の国籍は明らかにされていませんが、狂犬病の蔓延国であるフィリピンで犬に咬まれたにもかかわらず何の治療もしなかったことの危機意識の低さに驚くばかりです。狂犬病はこのようにヒトを含めた哺乳類が感染し発症するとほぼ100%は助からない非常に恐ろしい感染症で、多くの国で今なお発生が報告されているのです(下図参照)。野生動物などを介した国内への侵入リスクがあるなかで、半世紀以上も国内での発生のない日本の飼い主は、あまりにも狂犬病に対して無関心であることを恐れます。人での狂犬病の発生を防ぐためにも70%以上の犬へのワクチン接種を励行することで、国内でのヒトの感染を防ぐことが可能なのです。

今年は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が全国で蔓延し、今も一部地域での感染者数が報告されており、終息が全く見通せない状況になっています。政府は密閉、密集、密接の「3つの蜜」を避けることの協力依頼をおこなっており、クラスター(集団)発生のリスクを下げようとしています。このような状況のもと、今年の狂犬病ワクチンの接種にも影響を及ぼしています。つまり、毎年、多くの地方自治体ではワクチンの「集合注射」といって野外の特定の場所に犬を集めてワクチン接種を実施していましたが、今年はCOVID-19の感染拡大を防止のため中止にするところが頻発しています。しかし、法的な義務であることから、近隣の動物病院での接種を呼び掛けています。「集合注射」は行政にとって都合の良い効率的なワクチン接種を行える方式であることは承知していますが、多くの犬が集まり、屋外で風雨などの気象条件にも左右され、必ずしも衛生的といえない環境でのワクチン接種となっています。むしろ衛生環境の整った動物病院での接種の方が犬にとっても好ましいと考えられます。ただ、COVID-19の蔓延を防止するために「3つの蜜」を避けるということで、動物病院での接種も控えることに繋がらないかと心配しています。毎年の狂犬病ワクチン接種は犬の飼い主に課せられた責務であることを今一度認識していただきたいと思う次第です。なお動物病院を受診するときは、待合室での混雑を避けるために事前に電話連絡するなど、集団感染を防ぐための配慮をお願いしたいと思います。

 

 

https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou10/pdf/03.pdf