本学卒業生が新たなスクリーニング法による抗菌薬の開発に挑む

掲載日:2020.06.08

先のコラムで薬剤耐性菌により年間8000人が死亡すると推定されたとのニュースを紹介したところです(https://cvdd.rakuno.ac.jp/archives/3330.html)。これはメチシリン耐性黄色ブドウ球菌とフルオロキノロン耐性大腸菌の2種類の耐性菌感染症によるものであり、他の耐性菌感染症を入れると途方もない多数の方々が亡くなっているものと思います。しかし、耐性菌感染症に対する新しい抗菌薬の開発は、欧米を含めて極めて厳しい状況に置かれています。かって新規性の高い抗菌薬を開発してきた日本企業も、新規抗菌薬の開発に二の足を踏んでいます。その理由としては、まず使用期間が短いことが挙げられます。非常に長期間にわたり使用する生活習慣病の治療薬と同じような開発経費がかかる割には開発コストを回収できないことです。また、医薬品としての寿命も耐性菌の出現により比較的短いことも理由になるのかも知れません。図1に本邦での人体用の新規抗菌薬の承認数の推移を示しています。1980年代中ごろには20品目越える新規抗菌薬があったのが、2010年には5品目で今後さらに減少しそうな状況です。世界ではカルバペネム耐性腸内細菌科細菌感染症が増加している中、極めて由々しき状況にあり、新規の抗菌薬の開発が喫緊の課題となっているのです。

そのような中、本学獣医学群食品衛生学ユニットで学部生および大学院生として過ごし、アメリカでの留学生活を終えて、現在、札幌医科大学医学部微生物学講座に所属する佐藤豊孝講師が、「従来の抗菌薬開発法にとらわれない、新たな細菌感染症治療薬のスクリーニングに関する研究開発」という課題で国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の令和元年度「創薬基盤推進研究事業」に採択されました。本研究は、細菌の発育部位における生体内菌発育必須因子(in vivo bacterial Essential Factor)に着目し、本因子を阻害する化合物を検索するという、従来の抗菌薬開発プロセスとは異なる独創的なスクリーニング法を構築しました。本法の対象となる化合物は、従来の抗菌薬開発で対象となる化合物とは異なり、これまで「抗菌活性がない」とされてきたもので、細菌感染症治療薬の候補となる化合物を飛躍的に拡大することが可能です。また、特定の感染部位でのみ抗菌活性を示すことから、耐性菌を生み出す原因となる抗菌薬使用による「選択圧」を最小限に抑えることが可能となります。本研究を進めることにより、抗菌薬開発の停滞を克服するという新たな細菌感染症治療・予防薬開発に繋がる可能性を秘めています。今後の研究の進展に注視していく必要があると思います。

 

 

舘田一博:抗菌薬開発停滞の打破に向けて, 日本内科学会雑誌 102(11):2908-2914, 2013.

 

 

 

Press Release (札幌医科大学)2019年12月6日

https://web.sapmed.ac.jp/jp/news/press/jmjbbn000000kxhc.html