動物実験でネコの新型コロナウイルスに対する感受性が確認された!

掲載日:2020.04.13

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の蔓延により、4月7日に法律に基づく緊急事態宣言が発出されました。しかし、日本全国で新規の感染者数が日増しに増加し、皆様は今後の推移について不安を持って注視しているものと思われます。皆様がお持ちの不安の中には、自分や家族が感染したらという思いとともに、家で飼育するイヌやネコなどの伴侶動物への感染の可能性に関するものもあるのではないかと思います。このコラムでも香港で患者が飼育するイヌが無症状であるもののPCR検査で弱い陽性反応を示したことや、ベルギーで患者が飼育するネコで陽性反応があったことを紹介しました。さらに米国で動物園のトラで陽性反応を示したことも紹介しました。ただ、これらの症例は極めて少数であり、動物は新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)にどの程度の感受性を示すのかは、まだまだ不明なことが多くあったのです。このような状況の下、4月8日に米国の著名な科学雑誌のScienceにハルピン獣医学研究所から、感染試験により各種動物のSARS-CoV-2に対する感受性を調べた研究が報告され注目されました。結論としては、イヌ、豚、ニワトリ、アヒルではウイルスの増殖は不十分であったものの、ネコとフェレットでは感染することが明らかになりました。また、同居ネコにも感染することも分かりました。そこで今回はネコとイヌでの試験成績の概要を紹介したいと思います。

感染実験は中国で分離されたSARS-CoV-2を用い、成ネコ(6~9ヵ月齢)の鼻腔内に105PFU*のウイルスを接種し、3日目と6日目に各サンプルからのウイルスRNAと生きたウイルスを定量しました。その結果、3日目では接種部位近隣(鼻甲介、軟口蓋、扁桃腺、気管)のサンプルと肺や小腸からウイルスRNAの増幅が確認され、多くのサンプルで生きたウイルスも検出されました。6日目では接種部位近隣のサンプルからウイルスの増幅は観察されましたが、肺からは検出されませんでした。これとは別に感染ネコから非感染(暴露)ネコへの伝播試験を実施しました。2重のネットで2つに区分けされているケージを用い、最初にウイルスを接種したネコをケージに入れ、24時間後に未接種のネコをネットで区切られた別のケージに入れて観察しました。生きたネコから接種部位近隣のサンプルは採取しにくいため、糞便材料で試験をしたところ、接種ネコの3日と5日目にウイルスRNAの増幅が観察され、暴露ネコの3日目に1頭からも検出されました。暴露後11か12日目に各サンプルからのウイルスRNAを調べたところ、1頭のネコの鼻甲介、軟口蓋、扁桃腺、気管からウイルスRNAの増幅が観察され、ウイルスに対する抗体も観察されました。また若齢ネコを用いて試験を繰り返したところ、検出されるウイルスRNAや生きたウイルスが成ネコより多い傾向にあり、6日目に肺からもウイルスが検出されました。さらに伝播試験でも成ネコと同様の結果が得られました。つまり、ネコはSARS-CoV-2に感染し、同居する他のネコにも飛沫により感染を広げることが明らかになりました。

次にイヌにおける感染試験成績を見ると、ネコと同じように3カ月齢のビーグル犬5頭にウイルスを鼻腔内接種したところ、2日目に2頭、6日目に1頭の直腸スワブからウイルスRNAが検出されました。しかし、2日目にウイルスRNAが陽性となった1頭を調べたところ、調べた臓器や組織からウイルスは検出されませんでした。また、同居させた非感染イヌからウイルスは全く検出されませんでした。このことからイヌのSARS-CoV-2に対する感受性は低いことが分かりました。

以上の成績から、ネコはSARS-CoV-2に対して感受性があり、同居するネコに対しても感染する可能性があることが分かりました。しかし、今回の試験は非常に少ない数のネコを用いたものであり、また近交系といって遺伝学的なバックグランドが整ったネコであったことが試験結果に影響した可能性もあります。今回の結果が市中で一般に飼育されるネコに直接的に当てはまるのか、また感染したネコがヒトへの感染源になるのかなど不明な点が多く、今後のさらなる研究の進展に期待したいと思います。いずれにしても、COVID-19に罹患した方がネコを飼育している場合は、特に若齢ネコとの接触をできるだけ避け、2週間は別に過ごす方が良いように思われます。なお、イヌについては、ネコほど神経質にならなくても良いように思いますが、一般的に過度の接触は避け、イヌに触れた後の手洗いの励行をお願いしたいと思います。

 

*PFU: プラーク形成単位のこと。ウイルスは細胞に感染し増殖すると、細胞に壊死を引き起こす。その性質を利用してウイルスの感染価の測定に用いられる。

 

 

Shi J., et al. Susceptibility of ferrets, cats, dogs, and other domesticated animals to SARS-coronavirus 2, Science 08 April 2020: DOI:10.1126/science.abb7015

https://science.sciencemag.org/content/early/2020/04/07/science.abb7015