内閣府が実施した薬剤耐性に関する世論調査の概要

掲載日:2020.02.03

2019年10月25日に内閣府政府広報室は、「薬が効かない(薬剤耐性)感染症に関する世論調査」成績を公表しました。この調査は薬剤耐性感染症に関する国民の意識を把握し、今後の施策の参考にすることを目的としています。これまでも同様の様々な調査成績が公表されていますが、今回の調査成績が科学的な手法に則り極めて精度の高いものとなっています。調査対象は全国の18歳以上の日本人3000人とし、有効回答が得られた1,667人についての成績をまとめたものです。調査期間は8月22日から9月1日で、調査員による個別面接聴取で回答を得ております。

まず抗生物質について聞いたところ、名前を聞いたことがないと答えた方は1.4%でほとんどの方は何らかの知識を持っているようで、細菌がふえるのを抑えると答えた方が66.2%もいました(図1)。しかし、風邪やインフルエンザなどの原因となるウイルスには効かないと答えた方が37.8%であり知識が曖昧であることが窺われました。以前、このコラムでも紹介したYahooの意識調査(2016年10月)では、抗生物質は風邪やインフルエンザに効果がないって知っていますかと聞いたところ、知っていると答えた方が57.0%でありました(https://cvdd.rakuno.ac.jp/archives/2623.html)。調査方法や対象人数に違いがありますが、2016年から始まったわが国の薬剤耐性対策アクションプランで政府や様々な団体などで多額な予算と労力を使い薬剤耐性に関する普及啓発活動を推進しているにも関わらず、一般の方々に基本的な知識が浸透していないことが明らかにされました。また、ペットや家畜の医療にも使われていることを知っている方が28.3%と低率であることが注目されました。2017年にイヌの世帯当たりの飼育率は12.6%で、ネコは9.8%という調査があります。つまり、多くの方々は日頃イヌやネコと一緒に生活をして、病気の時に獣医師の診察を受けているのにもかかわらずやや低い認知度であると思われました。

次に薬剤耐性についてどの程度知っているかを聞いたところ、知っているとしたのが49.9%(良く知っているが18.7%+言葉だけ知っている31.2%)で、知らないと答えたのが48.7%でした。年齢別に見ると知っていると答えた方の割合は40歳代、50歳代で高く、知らないと答えた18~39歳が50%以上でした。これからも若年層に対する普及啓発活動の重要性が示されました。では、薬剤耐性について知っていると答えた方に、どのようなことを知っているかと聞いた答えが図5になります。感染症を起こす菌に抗生物質が効かなくなると答えた方が75.6%もおりました。これは薬剤耐性に関心を持った方の調査であり当然かもしれません。また、抗生物質を正しく飲まないと薬剤耐性菌が体の中で増える恐れがあると答えた方が53.7%もおり、抗菌薬の適正使用に関する認識もあると思われました。さらに健康なヒトでも薬剤耐性菌を持っている可能性があるや、薬剤耐性菌が人から人に感染することがあると答えた方が30%以下であったことから、知識も不完全であることが窺えました。これ以外でも抗生物質の服薬に関する意識や薬剤耐性対策の理解度についての調査成績も興味あるものであることから、是非とも公表されている調査成績をお読み頂きたいと思います。

以上、世論調査の概要について紹介させていただきました。2016年から開始された薬剤耐性対策アクションプランで官民を挙げて様々な媒体を活用してことあるごとに薬剤耐性菌に関する普及啓発活動をしてきました。しかし、残念ながら一般市民の皆さんにその努力が届いていないような結果でした。特に関心が薄い方々が非常に多いことが問題であると感じました。多くの方が薬剤耐性菌による直接的な実害がないことも普及啓発活動が結実していない理由に成るのかもしれません。薬剤耐性菌問題を広く国民の皆さんに知っていただくためにも地道な努力が求められますし、特に若年層に対する普及啓発活動の重要性を今回の調査は示していると思います。また、今回の調査で薬剤耐性についての情報の入手先を聞いたところ、医師や薬剤師などの専門家からよりテレビ・ラジオ・新聞が多いことも今後の活動に示唆を与えているようにも思えます。つまり、専門家は必ずしも最良のコミュニケーターではないようで、国民が信頼するメディアの方から問題の重要性を伝えた方が良いように思いました。今後は科学的な事実をどのように国民に伝えたら良いかを考えていきたいと思います。

 

内閣府 世論調査

薬が効かない(薬剤耐性)感染症に関する世論調査

概略版https://survey.gov-online.go.jp/tokubetu/r01/r01-yakuzai.pdf
調査結果の概要https://survey.gov-online.go.jp/tokubetu/r01/r01-yakuzaig.pdf
集計表https://survey.gov-online.go.jp/tokubetu/r01/r01-yakuzai.html