マダニに刺されて死亡-アウトドアライフに注意!

掲載日:2019.12.16

7月24日と10月10日のニュースで立て続けにマダニに刺されたことによる死亡症例が報道されています。これからも山菜取りやキャンプなど野外活動をする機会が多いと考えて注意喚起したいと思います。

ダニが媒介する感染症には、クリミア・コンゴ出血熱や回帰熱、このコラムでも紹介した重症熱性血小板減少症、ダニ媒介脳炎、ツツガムシ病など死に直結するものが多く知られています。今回の症例はリケッチアという微生物による日本紅斑熱という感染症になります。リケッチアはウイルスと同じく細胞の中でしか増殖できない微生物で、1~4ミクロンの球状または桿体、あるいは連鎖状、繊維状の形をしています。自然界ではネズミなどの野生齧歯類が保有し、マダニを介してヒトに感染します。リケッチアが病因である感染症には、発疹チフスやツツガムシ病なども知られています。日本紅斑熱の原因は、紅斑熱群リケッチアの一種であるRickettsia japonicaとされています。この感染症は1984年に馬原文彦医師により徳島県で最初に発見され、1987年に正式病名として日本紅斑熱と名付けられたもので、1992年に病原体名が決定しています。したがって、学名に日本に特有の感染症ということで種名にjaponicaと命名されています。

日本紅斑熱を媒介するダニは、キチマダニ、フタトゲチマダニ、ヤマトダニなどのマダニの仲間になります。マダニは野生動物が出没する環境に多く生息し、民家の裏庭や畑、あぜ道にも生息しています。キャンプや山菜取りなどで野山に入ってマダニに刺されると、2~8日の潜伏期を経て、頭痛、発熱、倦怠感を伴って発症します。高熱、発疹、マダニの刺し口が三大徴候とされています。急性期には39~40℃以上の弛張熱(日差が1℃以上で、最低体温が37℃以上)が多く、悪寒戦慄を伴います。あまり死亡例は経験していないのですが、今回のように死亡する場合もあるようです。

感染症法により医師に届出された日本紅斑熱の患者数は、2017年で337人と2013年の175人に比べても増加傾向にあります。これもアウトドアの流行と関係するのかもしれません。発生地区は関東以西を中心にしており、今回の症例も静岡県と滋賀県でこれまでの発生県でした。これはマダニの生息域との関連が強く示唆されます。また感染時期は春先から晩秋まで発生します。

治療はテトラサイクリン系抗菌薬やフルオロキノロン系抗菌薬が使用され、時に併用療法がおこなわれています。ただ、本感染症では予防が重要と考えます。野外では腕、足、首などの肌の露出を少なくすることで、ハイキングで山林に入る場合は、ズボンの裾に靴下を被せることが必要です。家に戻ったら上着は外で脱ぎ、直ぐに家の中に持ち込まないようにしましょう。良く払い落すか外で日光に当てるとダニは死滅します。ガムテープで服についたダニを取り除くと良いようです。また、マダニに対する忌避剤が雑貨店や薬局で販売されています。現在はディートとイカリジンを主成分とする製剤があり、2~8時間程度はダニを寄せ付けない効果があります。野外活動後はシャワーや入浴でダニがついていないかを良く調べます。吸血中のダニを無理に取り除こうとすると、ダニの口器が皮膚に中に残り化膿することがありますので、皮膚科などの医療機関で適切な処置を受けて下さい。また、ダニに咬まれたら数週間程度は体調の変化に注意し、症状がでれば医療機関で診察を受けて下さい。この場合は、必ずダニの刺し口を見せることと、野外活動の内容を医師に話していただくことが重要です。

最初に触れたようにマダニを媒介する感染症は多く、現在、特に重症熱性血小板減少症が注目されています。野外には必ずダニが生息しているとの認識をもって、特に活発な活動をする子供たちに最大の注意を払っていただきたいと思います。マダニ対策を十分に実行して楽しい野外活動をしていただくことをお願いします。

日本紅斑熱の発疹

日本紅斑熱の刺し口

馬原文彦:アウトドアライフとリケッチア感染症 三菱化学メディエンスForum2007特別号

https://www.medience.co.jp/forum/pdf/2007_05.pdf

 

国立感染症研究所:マダニ対策、今できること

https://www.niid.go.jp/niid/images/ent/PDF/190730madanitaisaku.pdf