【論文掲載】Prevalence and characterization of Clostridioides difficile isolates from retail food products (vegetables and meats) in Japan(野菜や肉からClostridioides difficleの分離とその性状)

掲載日:2019.12.02

Clostridioides difficle (Clostridium difficle)は、ヒトの抗菌薬関連下痢症・腸炎の主要な原因菌とされています。ヒトの腸管内に生息する細菌叢にC.difficileが含まれていると、感染症などで抗菌薬が使用された後に、消化管細菌叢の攪乱が起こり、抗菌薬関連下痢症・腸炎を発症します。その原因はC.difficleが過増殖し毒素を産生するためです。日本ではあまり問題視しない傾向にありますが、2013年にアメリカの疾病管理予防センター(CDC)は、緊急に対応しなければならない脅威(Urgent Threats)としてカルバペネム耐性腸内細菌科細菌と薬剤耐性淋菌と並んでリストアップしています。

では、なぜヒトはC.difficileを腸管に保菌するのでしょうか?一般に考えられるのは食品から摂取することであろうと思います。これまで私たちは日本の家畜やペットがこの菌を保菌することを明らかにしてきました。また、家畜の糞便から作られる堆肥からも検出されることを明らかにしました。これらのことは動物薬教育研究センターのコラムで紹介していますので読んでいただければ幸いです。(https://cvdd.rakuno.ac.jp/archives/2790.html)以上のような背景から、食肉や野菜からどれほどのC.difficileが分離されるのかが興味を持たれました。そこで今回、スーパーマーケットで小売りされている食品からC.difficileの分離状況とその性状に関する論文が受理されましたので紹介したいと思います。

供試した食品は2015-2019年にかけて14のスーパーマーケットから購入しました。内訳は242の新鮮野菜と468の食肉(89の鶏肉、28の鶏肝臓、200の豚肉、24の豚肝臓、127の牛肉)でした。その内、C.difficileが分離されたのは、8の野菜(3.3%)、6の鶏肉(6.7%)、1つの鶏肝臓(3.6%)、1つの豚肉(0.5%)、2の牛肉(1.6%)で、豚肝臓からは分離されませんでした。分離株の35%は病原性との関連する毒素を産生しました。すべての分離株はPCRリボタイプ型別ができ、12のPCRリボタイプに分類されました。リボタイプ014は日本の臨床例を含む世界中に分布する型で、今回の野菜分離株に認められました。日本の野菜におけるC.difficileの分離率は低いものの、それら由来からヒトへの伝播が考えられました。今回は食品からの分離報告ですが、今後は食品として経口的に摂取されたC.difficileが抗菌薬関連下痢症・腸炎の原因となるのか、毒素産生性を含めて詳細に検討する必要があると考えています。