薬剤耐性ワンヘルス動向調査年次報告書2019が公表

掲載日:2019.12.03

生態系で薬剤耐性菌が循環しているとの科学的なデータの蓄積により、ヒト、動物、環境といった垣根を超えた「ワンヘルス」として耐性菌対策を進めることの重要性が指摘されています。耐性菌対策を実施するに当たってワンヘルスでの耐性菌の動向を把握することは極めて重要であり、2016年に制定された「薬剤耐性(AMR)対策アクションプラン」においても、「薬剤耐性ワンヘルス動向調査」に係る体制を確立することが求められています。

このような状況を踏まえ、薬剤耐性ワンヘルス動向調査検討会が開催され、その成果物として「薬剤耐性ワンヘルス動向調査年次報告書」が2017年度から公表されています。今般、2019年度版が11月27日に公表されましたのでお知らせします。

2019年度版は2018年度版に比べて、さらにページ数が増え100ページを超える大作となっています。畜産分野を見てみると、アクションプランの成果指標となっている健康家畜由来の大腸菌のテトラサイクリン系に対する耐性率が、2014年の45.2%から2015年には39.9%に減少したものの、2017年には40.1%であり2015年より増加しています。また、第3世代セファロスポリン系やフルオロキノロン系に対する耐性率は概ね低い値で推移しています。このことは家畜に対するテトラサイクリン系に関する対応の必要性を示しており、予防的な使用の制限などの積極的な対策をとることが求められます。また、サルモネラ属菌に関する記載で注目されたのは、食鳥処理場由来の上位5血清型の食品及びヒト由来における割合を示したことです。ヒトから分離されるサルモネラ属菌の血清型の内、上位5血清型の割合は24%に過ぎず、ヒトにおけるサルモネラ属菌の感染源の多様性が示されたものです。また、今回から血清型ごとの耐性率として、鶏からの分離率が高いS.InfantisとS.Schwarzengrundの各種抗菌薬に対する耐性率が示され、より詳細なものとなりました。さらに、これまで不十分とされていた環境に関して研究成果であるものの、記載が充実してきたようです。しかし、指標細菌が未定あるなどの問題がありますが、ワンヘルスの一角である環境分野のさらなる充実が求められます。

一方、抗菌薬使用量に関してですが、これまで愛玩動物について動物用として承認された抗菌薬の販売量の調査成績だけであったものを、農林水産省が実施した卸売段階の人体用抗菌薬の調査成績を掲載して充実が図られました。

以上のようにワンヘルスにおける耐性菌の状況や抗菌薬の使用状況が益々充実して公表されています。これもアクションプランがなければ到底実施されなかったことであり、今後もさらに充実した報告書となるものと思います。さらにこれらの状況を踏まえたワンヘルスでのわが国独自の耐性菌対策に繋がることを期待したいと思います。なお、本報告書は英文版も作成することになっており、近々に日本の状況が世界に発信されることになっています。

 

薬剤耐性ワンヘルス動向調査年次報告書2019 薬剤耐性ワンヘルス動向調査検討会
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000120172.html