人気テレビドラマで使われた「衛生仮説」とは?

掲載日:2019.09.02

すでに終了したテレビドラマで元NEWSのメンバーである山口智久さんが主演した「インハンド」という番組がありました。右手がロボットハンドの天才科学者が難事件をいとも簡単に解決していくサイエンスミステリーでした。今回はその中で使われた「衛生仮説」について紹介したいと思います。

衛生仮説は1989年に英国の疫学者であるストラカン(Strachan DP)が提唱したアレルギーの発症に関する概念です1)。テレビドラマでこのような専門的な医学概念が取り上げられること自体が驚きの話しなのですが・・・。衛生仮説を説明すると英国で生まれた17414名の小児を23年間追跡し、11歳、23歳の気管支喘息や1歳までの湿疹保有率は兄弟姉妹(同胞)数が多い程低下しており、生まれた順が遅い程アトピー性素因の抑制効果があるというものです。同胞数が多いということは、風邪やケガ、それに屋外から多くの微生物を室内に持ち込む機会が多いため、末の弟や妹は幼少期から多くの微生物に曝されて免疫の発達が促進し、アレルギー疾患の発症を抑制するというものです。逆に言うと乳幼児期に微生物の刺激がないと、免疫の発達が不十分でアレルギー疾患の発症に繋がるということになります。

もう少し詳しくメカニズムを紹介すると、我われの血液の中にはリンパ球があり、T細胞と抗体を作るB細胞があります。T細胞は免疫反応を調節するヘルパーT細胞とウイルス感染細胞などを傷害するキラーT細胞があります。ヘルパーT細胞には、細胞性免疫に関係するTh1細胞と、液性免疫に関係するTh2細胞があり、両細胞はバランスを取りつつ存在しています(Th1/Th2バランス)。乳幼児期に微生物の感染がないと、Th1/Th2バランスが崩れてTh2優位の状態になるのです。そうなるとアレルギー物質に曝露されるとB細胞から抗体(IgE抗体)が産生され、それがマスト細胞の表面に結合して活性化し、ヒスタミンなどを含む顆粒が放出されアレルギー特有の症状をだすのです。

ではアレルギー体質にならないためはどうすれば良いでしょうか?スウェーデン人であるVasileiadouは、4歳の子供が家畜のいる農場で生活するとアレルギー性鼻炎の発症リスクを半分に抑える効果があることを報告しました2)。特に4歳から12歳まで継続的に農場で生活すると、その関連はさらに強くなりました。これは動物そのものの影響ではなく、動物周辺にいる多くの微生物に曝されることが原因のようです。したがって、そのような環境で継続的に生活することが重要のようです。たまに農場に行く位では影響しないのです。

不幸にもアレルギーを発症した場合は、医学的な治療を受けても完治することは容易でないことはご承知の通りです。完治は無理ですが症状を簡単に軽減する効果のある方法を紹介したいと思います。それはヨーグルトを毎日食べることなのです。Xiaoらは中程度の花粉症患者40名にBifidobacterium longum BB536により製造されたヨーグルトを1日200gを14週間食べてもらったところ、症状の軽減効果のあることを報告しました3)。ヨーグルトを摂取することでTh1細胞を活性化し、Th2細胞が抑えられたために症状が改善されたことも分かっています。

以上のことは乳幼児期に過度の抗菌生活を送ることが、将来的にアレルギー体質の素地を作ってしまうことを示しています。現在、私たちの周りにはあまりに抗菌製品が氾濫しており、全ての細菌が悪者のように神経質に、過剰な抗菌製品に依存すると子供たちに悪影響を与える可能性のあることを示しています。何事もほどほどが良いようで、子供たちを自然豊かな環境で育てることが良いようです。

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1)Strachan DP. Hay fever, hygiene, and household size. BMJ 1989; 299:1259-60.

2)Vasileiadou S, et al., Eating fish and farm life reduce allergic rhinitis at the age of twelve. Pediatr Allergy Immunol. 2018; 29:283-9.

3)Xiao JZ, et al.: Effect of probiotic Bifidobacterium longum BB536 in relieving clinical symptoms and modulating plasma cytokine levels of Japanese cedar pollinosis during the pollen season. A randomized, double-blind, placebo-controlled trail. J Investig Allergol Clin Immunol ;16: 86-8.