ペットフードのサルモネラ汚染によるイヌの健康被害が発生

掲載日:2019.08.26

2018年10月23日付けの本コラム(https://cvdd.rakuno.ac.jp/archives/2743.html)でイヌ用トリーツ(おやつ)から薬剤耐性サルモネラ属菌が分離されたとの我々の調査結果を、また2019年3月11日付けの本コラム(https://cvdd.rakuno.ac.jp/archives/2942.html)では公表論文を紹介し、広くトリーツの消費者の方々に対して注意を喚起したところです。今般、生活クラブ連合会(東京)が取り扱っていたイヌやネコ用のペットフード(トリーツ)にサルモネラ属菌が汚染し、イヌ14匹が死亡した疑いがあると報道されており、ペットフードとしては非常に大きな健康被害が発生しました。健康被害の概要について、生活クラブのホームページ(https://seikatsuclub.coop/news/detail.html?NTC=1000000274)から紹介すると、今回の製品は「犬・猫用ササミ姿干し 無塩」で、購入した消費者に対して調査(2019年4月15日)したところ、59名の方から68匹のペットに嘔吐や下痢、血便、死亡などの症状を呈していたことが分かりました。2018年以降の総供給数は47,222個となり、かなりの人気商品のようです。

生活クラブ連合会の調査によれば、分離されたサルモネラ属菌はO7群であると報告されています。O7群についてはヒトの食中毒事例(http://idsc.nih.go.jp/iasr/25/287/kj2872.html)や、病院感染事例(http://www.jarmam.gr.jp/jarmam/17-1/jp/04.html)も報告されています。近年、ヒトから分離されたサルモネラ属菌の調査1)によれば、O7群であるS.Infantisが12%、S.Thompsonが4.9%、S.Bareillyが2.1%としばしば分離される血清型となります。また、この内特にS.Infantisは、鶏から最も高頻度に分離されるサルモネラ属菌の血清型であり、トリーツを取り扱う飼い主の健康被害も心配されます。

今回の原因について生活クラブ連合会で調査したところ、原因の特定には至っていないようです。今回の事例を受け、加熱温度が100℃未満のペットフードについて、毎回の製造日(製造ロット)について、微生物検査で大腸菌群とサルモネラ菌の陰性を出荷基準に加え、検査結果確認後に出荷するように変更したとのことです。

イヌやネコにあたえるペットフードについては、近年、著しい進歩を遂げ、ヒトの医療食に相当するような製品も開発されています。一方で、栄養学的な根拠に乏しい粗悪品も流通するようになり、2007年3月にアメリカにおいて有害物質(メラミン)が混入するペットフードで多数のイヌやネコが死亡するという事故が起こっています。そこで2008年3月に「愛がん動物用飼料の安全性の確保に関する法律(ペットフード安全法)」が公布されています。先に述べた我われの研究報告を受け、農林水産省はトリーツについてもペットフード安全法第5条第1項に基づき、愛玩動物用飼料の成分規格等に関する省令の別表の2の販売用愛玩動物用飼料の製造の方法の基準を遵守することを求めていました(http://www.famic.go.jp/ffis/pet/tuti/30_3086.html)。しかし、残念ながら今回の事例はこの通知を守られなかったことにより発生したものと思われます。今後、生活クラブ連合会では、今回の事例を教訓としてペットフードに関する自主規制を強化する方針を示しており、今後の成り行きに注視していきたいと思います。

1)渡邊涼太,小川恵子,久保田晶子,森本洋:北海道におけるヒト由来サルモネラ血清型の推移,道衛研所報 66:65-67(2016).