イヌになめられてカプノサイトファーガ感染症を発症し両手両足を失う!

掲載日:2019.08.09

カプノサイトファーガ感染症については、2019年4月8日付けのコラムでも紹介した通りで、イヌ・ネコの口腔内に常在している3種の細菌、Capnocytophaga canimorsusC.canis及びC.cynodegmiを原因とする感染症です。ヒトにおける本感染症はまれですが、時に重症化した例では敗血症を示すことが最も多いとされています。さらに播種性血管内凝固症候群(DIC)、敗血症性ショックや多臓器不全に進行して死に至ることがあります。今般、アメリカで2例の患者が別々にイヌになめられてカプノサイトファーガ感染症を発症し両手両足を失う事例が報道されました。イヌやネコを飼育する皆様に是非とも知っておいて欲しい感染症ですので、ここでこの2事例を改めて紹介したいと思います。

最初の事例は米ウィスコンシン州で、48歳の男性が犬になめられたことが原因とみられる感染症にかかり、病院で両手両脚を切断したものです(https://www.cnn.co.jp/usa/35123474.html)。原因菌はC. canimorsusで、最初はインフルエンザだと思ったそうで、男性は最終的に病院に搬送されました。血液などの循環や血圧が大幅に低下しており、両手両脚の切断手術を受ける結果となったものです。どのイヌから感染したかは分かっていませんが、妻は飼い犬が原因になった可能性もあると話しています。

次に2例目を紹介します(https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190805-35140895-cnn-int)。米オハイオ州に住む女性が、イヌになめられたことが原因で感染症にかかり、地元病院で両手両脚を切断する手術を受けたものです。女性はドミニカ共和国から休暇で戻ってきた数日後からに背中の痛みや吐き気を訴えて自宅療養していたところ、体温が乱高下して病院の集中治療室に搬送されました。原因は熱帯病ではなく飼いイヌに傷をなめられたことを原因とするカプノサイトファーガ感染症でした。直後に意識を失い、皮膚が急速に赤紫色に変化して壊疽(えそ)になり、血栓もできたことから両手両足を失うことになったものです。

本感染症は1976年に米国で報告された肺血症例が最初の報告とされています。その後、2017年末までに世界中で約500例の報告がなされています。2016年のフィンランドの報告では、人口100万人当たりの患者数が4.1人で致死率は5%(重症例は19%)と報告されています。日本においては、1993年から2017年末までに計93例(うち死亡19例)が確認されています。本菌はイヌやネコの常在菌であることから、抗菌薬で排除することはできません。したがって、飼っているイヌやネコが保菌していることを前提に、過度なふれあいは避けましょう。また、傷口がある場合は石鹸と流水で良く洗い、傷口をイヌやネコになめられないようにしましょう。なお、本感染症ばかりでなく、イヌやネコには様々な感染症のリスクもあることを常に意識した上で飼育することが重要です。本感染症の詳細な情報は厚生労働省のホームページで得ることができます(https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou18/capnocytophaga.html)。