スマートフォンは細菌で汚染されている!

掲載日:2019.06.03

最近、日本のレストランでスマートフォン(スマホ)をいじりながら食事をしている風景を良く目にします。中には家族連れで食事をしている最中に家族全員が無言でスマホをいじっている姿をみると異常で情けなく思ってしまいます。食事が栄養補給だけの目的なら動物と全く同じですよね。当初は日本に観光に来ているアジア系の人達の国民性かと思っていましたが、最近は少なからず日本人でも同じような行動をとっており、食事中のマナーについて考えさせられるこの頃です。食事マナーの問題はさておき、今回は細菌学的観点からスマホの液晶部分に付着する細菌の話しです。

サウジアラビアのキング・アブドゥルアズィーズ大学で2015年に行われた研究によると、105人中101名(96.2%)の医学生のスマホから多くの細菌が検出されたことが報告されています1)。具体的には、コアグラーゼ陰性ブドウ球菌が68.9%から検出され、バチルス属細菌が20.0%、黄色ブドウ球菌が16.2%、パントエア属細菌が0.95%、連鎖球菌が0.95%の頻度で検出されました(図参照)。この内、黄色ブドウ球菌は細菌性食中毒の原因であり、バチルス属菌の中にも食中毒起因菌が含まれています。今回の論文によると、トイレの中でスマホを使用する学生が59%おり、スマホの清拭に消毒薬を使用しないと答えた学生が68%にも達しています。ここで話題が少し逸れますがトイレの微生物汚染について紹介したいと思います。病院外来の待合室の洋式トイレの便座からメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)を含む黄色ブドウ球菌が検出されたとの報告がなされています2)。また、排便後の手指に細菌汚染があり、大腸菌も含まれていたそうです3)。大腸菌の液体培地を用いた実験で実際の状況と異なるものの、大腸菌はトイレットペーパー10枚以上を通過したそうで、トイレ終了後のトイレットペーパーの三角折を控えるようにお願いしているところもあるようです。いずれにせよ、トイレを含む毎日の生活の中でスマホは細菌汚染し、消毒しないことからスマホ表面に細菌が残っていたものと思われます。さらに手洗いの不備も指摘されるかもしれません。そこで本論文では医療行為中のスマホの使用を制限するように提言しており、70%の学生は支持しています。日本でも同様の調査が行われており、40台のスマホ中23台(57.5%)から一般細菌が検出され、大腸菌は19台中1台(5.3%)から、黄色ブドウ球菌は21台中3台(14.4%)から検出されています4)。細菌数は一般細菌で10cm2あたり19台(47.5%)から1~9個検出され、大腸菌で1~9個、黄色ブドウ球菌で10~29個検出されたものもありました。清掃回数は50%以上の方が1日0回と報告しています。

以上のことから、スマホの液晶部分には菌数は少ないものの食中毒菌を含む多くの細菌で汚染されており、食事中はスマホに触れないことが食品衛生上重要に思えます。また、毎日、消毒薬(70%アルコール)を用いて液晶部分を清拭するとともに、トイレでは使用しないことの習慣をつけることも必要であると思います。当然ながらトイレの終了後や食事前の手洗いの励行はお願いしたいと思います。スマホを使用するに当たって、時と場所を考えることは勿論のことで、折角の家族を囲んだ食事では料理を堪能するとともに、楽しい会話を楽しんで頂きたいと願う次第です。

 

<引用文献>

1) Zakai S et al.: Bacterial contamination of cell phones of medical students at King Abdulaziz University, Jeddah, Saudi Arabia, J Microscopy and Ultrastructure 4(3):143-146, 2016.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6014197/

2) 田爪正氣ほか:公共トイレの様式便座上における細菌学的汚染調査 東海大学健康科学部紀要 5:69-72, 1999.

3) Ohono T: A study on the effect of hand washing to remove bacterial contamination on fingers, AINO Journal 1:9-12, 2002.

4) 森岡郁晴,宇田賀津,山本美緒:タッチパネルを有する機器の細菌汚染状況と清掃状況および汚染意識 日衛誌 70:242-248, 2015.
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjh/70/3/70_242/_pdf