国連が耐性菌対策について緊急提言!

掲載日:2019.05.13

4月29日に国連は、薬剤耐性菌が世界的に増加し、危機的な状況にあるとして、早急に業界横断的な対策を講じるよう各国に求める報告書を公表しました1)。現在、少なくとも毎年、700,000人が薬剤耐性菌により死亡しており、その内230,000人は多剤耐性結核菌による死亡です。報告書は性感染症と同様に呼吸器や尿路感染症などの最も一般的な病気で治療ができなくなり、医療者はより危機に曝され、そして食料供給システムは不安定化すると述べています。WHO事務局長であり、IACG2)の副議長であるTedros Adhanom Ghebreyesusは、「我々はもっとも重要な抗菌薬のいくつかを守るための戦いの臨界点にいる。毎年数千人の生命を守ることのできる勧告を具体化する。」と述べています。また、ヒト、動物、食品および環境の健康は密接に関連しており、One Health approachによる協力を呼び掛けています。各国への勧告は以下の通りです。

 

・予算や人材開発の拡大を国家行動計画の優先事項とすること

・ヒト、動物、植物の健康に係る専門家による抗菌薬の責任ある慎重使用のためのより強い規制制度の確立と広報活動を支援すること

・薬剤耐性と闘うための新たな技術に関する野心的な研究開発に投資すること

・緊急に成長促進目的の非常に重要な抗菌薬の使用を禁止すること

 

国連の副事務局長でIACGの副議長であるAmina Mohammedは、「薬剤耐性は、我われが地球規模で直面している最大の脅威の一つだ。ぐずぐずしている時間はない。」と強調しました。

 

以上の国連報告書を見てみると耐性菌対策がWHOから国連に舞台を移しつつあるように感じます。最近の薬剤耐性菌対策を主導してきたのはWHOで、2015年に採択された国際行動計画が切っ掛けとなりました。その後、加盟各国で国家行動計画が作成され実行に移されています。国連が耐性菌問題に係ったのは、2016年9月に開催された第71回国連総会で薬剤耐性に係るHigh-level meetingでした。この会議から耐性菌対策が地球規模で実施されることになりました。今回、国際機関の協力の下、さらに踏み込んだ勧告が国連から発出されたことに、この問題の緊急性と危機感を垣間見ることができます。今後は先に述べた勧告を遵守するために加盟国が一層の努力を求められることになりそうで、国際的に抗菌性飼料添加物の使用は益々厳しくなりそうです。

 

1)No Time to Wait: Securing the future from drug-resistant infections
Report to the Secretary-General of the United Nations
April 2019
https://www.who.int/antimicrobial-resistance/interagency-coordination-group/IACG_final_report_EN.pdf?ua=1

2)Interagency Coordination Group on Antimicrobial Resistance
第71回国連総会で薬剤耐性に関するHigh-level meetingの声明(A/RES/71/3)が採択されました。この声明に基づき国連事務総長がWHO、FAO、OIEの協力のもと設置した組織です。