【論文掲載】Detection of the sul2-strA-strB gene cluster in an ice core from Dome Fuji Station, East Antarctica (南極のドームふじ基地から採取した氷芯におけるsul2-strA-str遺伝子クラスターの検出)

掲載日:2019.04.01

抗生物質の薬剤耐性遺伝子は、抗生物質産生菌が産生する抗生物質から自らを守るために備わったものであると考えられています。事実、抗生物質産生菌の染色体に耐性遺伝子が局在することが知られています。このことは抗生物質が臨床や畜産分野で広く応用される遥か昔から、抗生物質産生菌が地球上に誕生した時点で耐性遺伝子が存在することを意味します。また、さまざまな環境細菌から現在、医療分野で検出される耐性遺伝子が検出されています。そこで耐性遺伝子は抗生物質が広く応用される以前から存在していたことを明らかにするため、我々は南極のドームふじ基地で掘削された1200-1400年前、1700-2100年前、2200-2800年前の氷柱を用い、耐性遺伝子の検索を実施しました。

氷柱の表面は殺菌処理を行ない、現在のヒトや動物の影響を排除した氷芯部分を供試しました。その結果、サルファ剤耐性に係るsul2遺伝子と、アミノグリコシド剤耐性に係るstrAstrB遺伝子の2764bp遺伝子クラスターが、1200-1400年前に氷柱から検出されました。この遺伝子クラスターはstrA遺伝子に多様性があったものの、現在の細菌が保有する塩基配列と高いレベルでの相同性を示しました。また、この遺伝子クラスターを発現した大腸菌は、ジヒドロストレプトマイシンやスルファメタキサゾールの感受性を低下させました。

以上のことから、今回の研究は抗菌薬使用以前から耐性遺伝子が存在することの更なる証拠を示すことができました。今回sul2遺伝子が検出されたことは、人類の英知で作られた合成抗菌薬の耐性遺伝子も抗生物質耐性遺伝子と同様に抗菌薬が使用される以前に出現したことを示唆しました。したがって、現在使用される抗菌薬のみならず今後開発され応用される抗菌薬の耐性遺伝子はすでに生態系で存在していることを示しており、医療、畜産、環境における抗菌薬の適正使用を更に推進することにより、できるだけ耐性菌を増やさない努力が求められます。