野生イノシシに使用する豚コレラワクチンの法的な取り扱い

掲載日:2019.03.04

昨年9月9日に岐阜市の養豚農場に突如発生した家畜伝染病である豚コレラは、瞬く間に岐阜県内に拡散し、愛知県でも感染豚が発見されるなど終息の目途が全く立たない状況が続いています。まさに2010年の宮崎県で発生した口蹄疫以来の最大級の脅威に日本の畜産がさらされているのです。今回の豚における感染拡大の最大の原因は、感受性が高く、行動範囲の広い野生イノシシに豚コレラウイルスが侵入したことだと思われます。そこで農林水産省は2019年2月22日に野生イノシシを介した豚コレラウイルスの拡散防止対策を講じる必要があると判断し、海外で実績のある未承認の経口(餌)ワクチンを野生イノシシに使用するという苦渋の決断をしました

http://www.maff.go.jp/j/press/syouan/douei/attach/pdf/190222_12-2.pdf)。わが国で初めての取組みであり、その有効性は今後の経過に委ねるとして、今回は未承認の豚コレラワクチンを輸入し、使用することの「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(薬機法)」上の取り扱いを整理したいと思います。今回の事例は農林水産省の超法規的な取り扱いではなく、あくまで法律に準拠したものであることをご理解ください。

海外の動物用ワクチンを国内に導入するためには、薬機法第83条の2の第2項で許可業者でなければ動物用医薬品を製造及び輸入してはならないという規定があります(動物用医薬品の製造及び輸入の禁止)。ただし、この禁止規定には、試験研究の目的で使用するために製造又は輸入をする場合その他の農林水産省令で定める場合には、適用しないという例外規定が設けられています。

その例外規定である動物用医薬品等取締規則第213条の第4号では、国や都道府県が家畜伝染病の予防の目的で使用するために未承認の生物学的製剤を輸入(製造)することが定められており、そのような場合は輸入(製造)できるということになります。今回の未承認の豚コレラワクチンの輸入はまさにこの規定に準拠した対応というわけです。なお、未承認の生物学的製剤は家畜伝染病予防法第50条で都道府県知事の許可を受けなければ使用してはならないとされていますので、使用に当たっては都道府県知事の許可が必要となります。

以上のことから今回の豚コレラワクチンの緊急輸入はあくまで薬機法に準じた対応であるわけで、どのような動物用ワクチンに適応されるのかは感染症の性質や病勢などを勘案した高度の行政判断によるもので慎重の上にも慎重に検討されるべきものなのです。このように農林水産省は極めて重い判断をしたわけであり、この対応によりできるだけ早期に野生イノシシによるウイルスの拡散が防止され豚コレラが終息することを祈らずにはいられません。

【参考条文】

◎医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(旧薬事法)

(動物用医薬品の製造及び輸入の禁止)

第八十三条の二 前条第一項の規定により読み替えて適用される第十三条第一項の許可(医薬品の製造業に係るものに限る。)を受けた者

でなければ、動物用医薬品(専ら動物のために使用されることが目的とされている医薬品をいう。以下同じ。)の製造をしてはならない。

2 前条第一項の規定により読み替えて適用される第十二条第一項の許可(第一種医薬品製造販売業許可又は第二種医薬品製造販売業許可

に限る。)を受けた者でなければ、動物用医薬品の輸入をしてはならない

3 前二項の規定は、試験研究の目的で使用するために製造又は輸入をする場合その他の農林水産省令で定める場合には、適用しない。

 

 

◎動物用医薬品等取締規則

(医薬品の製造及び輸入の禁止の例外)

第二百十三条 法第八十三条の二第三項の農林水産省令で定める場合は、次のとおりとする。

一 試験研究の目的で使用するために医薬品の製造又は輸入をする場合

二 対象動物以外の動物の所有者が、当該動物に使用するために医薬品(生物学的製剤であって、体外診断用医薬品でないものを除く。

次号において同じ。)の製造又は輸入をする場合(当該医薬品が要指示医薬品である場合にあっては、当該所有者が獣医師の処方箋の交付

又は指示を受けた場合に限る。)

三 獣医師又は飼育動物診療施設の開設者が動物の疾病の診断、治療又は予防の目的で使用するために医薬品の製造又は輸入をする場合

四 国又は都道府県が家畜伝染病の診断又は予防に使用されることが目的とされている生物学的製剤(法第十四条第一項、第十九条の二第一項、

第二十三条の二の五第一項又は第二十三条の二の十七第一項の規定による承認を受けておらず、かつ、承認の申請がされていないものに限る。)

の製造又は輸入をする場合

五 医薬品の製造業者が製造し、又は販売するために原薬たる医薬品の輸入をする場合

六 法第二十三条の二の三第一項の登録(体外診断用医薬品の製造業に係るものに限る。)を受けた者が体外診断用医薬品の製造をする場合

七 法第二十三条の二第一項の許可(体外診断用医薬品の製造販売業に係るものに限る。)を受けた者が体外診断用医薬品の輸入をする場合