アフリカ豚コレラ侵入の危機!

掲載日:2018.08.27

ここ数日のテレビ報道などでご承知かと思いますが、中国でアフリカ豚コレラ(African Swine Fever;ASF)が猛威を振るっており、近隣国である日本はASFが侵入する危機に直面しています。本病の病勢の激しさから口蹄疫に勝るとも劣らぬ家畜衛生の脅威と言えるでしょう。そこで今回はASFの現状について紹介したいと思います。

ASFはアフリカ豚コレラウイルスを原因とする高い致死率と強い伝染性を有する豚の急性伝染病で家畜伝染病予防法での家畜伝染病に指定されています。これまで日本での発生は全く報告されていません。豚コレラと症状が似ているために命名されたようですが、豚コレラとは全く別の伝染病です。本病の主な伝播経路は豚同士の直接的または間接的な接触であるといわれています。また、ヒメダニ属ダニがベクターになることも報告されています。近年はアフリカおよびイタリア領サルジニア島にその発生は限局していたのですが、2007年からユーラシア大陸に本病が突如として侵入しました。2018年、中国でアジア初の発生が報告され、近隣で物や人の交流が盛んなわが国への侵入リスクが高まっているのです。本病に対する有効なワクチンは開発されていません。したがって、迅速な診断による摘発淘汰が行われます。興味あることに感染豚や実験感染豚にはこのウイルスに対する中和抗体が産生されないようで、ワクチン開発を難しくさせているようです。

ASFの発生状況をみると、2018年8月3日現在、アフリカ29か国とヨーロッパ15か国に発生が認められています(図参照)。ヨーロッパでは旧社会主義国が多いようで、ドイツやフランスなどは含まれておりません。国境を接しているにもかかわらず清浄性を維持していることは、今後の対策を考えるにあたってのヒントがあるのかもしれません。ヨーロッパでASFが封じ込められていれば問題は大きくなかったかもしれませんが、今年の8月1日に中国の遼寧省での初発以来、8月14日に河南省、8月15日に江蘇省、8月17日に浙江省と日本に近い地域での発生が続発しています(図参照)。第4例目の浙江省では、症例数が430頭で340頭が死亡しています。この文章書いている今も拡大しているかもしれません。このように極めて伝播力の強い伝染病なのです。

本病の防疫には、汚染地域からの豚、豚肉、豚肉加工品(特に非加熱の加工品)の輸入禁止ならびに水際検査の徹底に加え、航空機や船舶で提供された食品残渣の処理にも十分に注意を払う必要があるとされています。また、中国から日本への旅行者が多い現在、旅行者の靴底に付着した土壌の消毒も重要に思われます。このような水際対策に加え、日本国内の各農家でも、農場バイオセキュリティを強化することが重要であると思われます。本病を疑う発生を認めた場合には、下に示した「アフリカ豚コレラに関する特定家畜伝染病防疫指針」に則り迅速な対応を図る必要があります。いずれにしても有効なワクチン開発は喫緊の課題にも思われます。

本病は豚やイノシシ等のイノシシ科動物に限定して感染します。アフリカのイボイノシシ(Phacochoerus aethiopicus)は自然宿主もしくは終末宿主と考えられており、感染しても無症状でイボイノシシから豚への直接伝播は知られていません。本来、サハラ以南のアフリカ大陸においてイボイノシシなどの野猪とダニで感染環が成立していた地域に、ジャングルが開拓されて養豚場が建設され自然宿主が減少することにより、ウイルスが豚へ宿主域を拡大するような進化をとげたように思われます。まさにニパウイルス感染症と同様に自然を無視した強欲な人間の経済活動が新興感染症を生み出した事例にも思えます。

口蹄疫や鳥インフルエンザに引き続き経済的や社会的な家畜衛生上の脅威がまた一つ増えたわけで、集中豪雨などの自然災害で社会が疲弊する中、官民の獣医師の力を結集してASFの国内への侵入を是が非でも阻止したいと願う次第です。なお、農林水産省のホームページ上にASFに関する詳しい情報が記載されていますので参考にして下さい。

アフリカ豚コレラに関する特定家畜伝染病防疫指針http://www.maff.go.jp/j/syouan/douei/katiku_yobo/k_bousi/pdf/acsfshishin.pdf

 

農林水産省 アフリカ豚コレラについてhttp://www.maff.go.jp/j/syouan/douei/asf.html