空港で活躍する犬たち

掲載日:2018.07.17

皆さんの中で海外旅行して帰国した時に、成田などの国際空港の荷物の受け取り場所で係員に連れられた犬を見かけたことがあるのではないでしょうか?あの犬たちは何をしているかご存知でしょうか?今回は国際空港で活躍する犬たちの話しです。

国際空港で活躍する犬には2つの大きな役割があります。一つは家畜などの肉製品から海外で発生する家畜伝染病の国内への侵入を防止することです。これは家畜伝染病予防法に則り偶蹄類の動物(牛、豚、山羊、羊、鹿など)、馬、家禽、犬、兎、みつばち由来の肉や臓器、卵、骨、脂肪、血液、皮、毛、羽、角、蹄、腱、生乳などが家畜伝染病の発生国から国内に持ち込まれ国内で伝染病が発生することを未然に防ぐためです。ただし、全ての国で家畜伝染病が発生しているわけでないことから、持ち込みに当たっては動物検疫所に確認し、手続きを取ることが重要です。しかし、実際には渡航前にどんなお土産を買うのかは決めていないことがほとんどです。もし誤って伝染病発生国から上記の製品が持ち込まれた時に活躍するのが検疫探知犬となります。この犬は、手荷物の中から動植物検疫の検査を必要とする肉製品、果物等を嗅ぎ分けて発見する訓練を受けています。日本でも平成17年12月に成田国際空港に2頭の検疫探知犬が導入され、その後、関西国際空港、東京国際空港(羽田空港)、福岡空港、中部国際空港、新千歳空港、那覇空港、川崎東郵便局に導入され、活動しています。平成30年3月には中部国際空港と福岡空港に2頭が増え、現在、28頭の「動植物検疫探知犬」が活動しています。

もう一つの役割を持つ犬は、増大する麻薬類の密輸入を防止する目的で導入された麻薬探知犬となります。税関では昭和54年6月に米国税関の協力を得て麻薬探知犬2頭を導入したのが始まりで、現在では全国の税関に約130頭の麻薬探知犬が配備されています。現在、国内でも麻薬探知犬の育成が開始されており、麻薬探知犬として認定された多くの犬たちが空港で活躍しています。さらに、昭和62年には東京税関に麻薬探知犬訓練センターが開設され国内での育成に努めています。最近では、爆発物探知犬や銃器探知犬も

導入されており、多くの犬たちが空港で仕事をしていることになります。

以上のような活動を担う犬の特質は、ご承知のように並はずれた嗅覚にあります。もともと犬が優れた嗅覚を保有する理由は、自分で餌を求めて彷徨い歩いた時代に、毒物が含まれたり細菌に汚染した食べ物を識別することが生きていくために必要な能力であったためと思われます。一般に犬の嗅覚は、人の1億倍まで感知できると言われていますが、臭気の種類で異なるようです。例えば酸臭なら1億倍で、腐敗バター臭で80万倍、ニンニク臭で2000倍と言われています。このように犬は人と比べて鋭敏な嗅覚を持っているのですが、人の嗅覚は犬並みに発達しているという論文や、嗅覚情報を処理する脳の嗅球という場所の神経細胞は動物と人で差がないと言う論文が、アメリカの有名科学誌であるサイエンスに発表されています。つまり、人は1兆種類の臭いをかぎ分ける能力があり、とりわけバナナの香りには犬や兔よりも敏感だそうです。そうであれば人を育成して、検疫探知犬や麻薬探知犬の代わりを務めればよさそうですが、進化の過程でこの能力の多くを失ったようです。その理由として挙げられているのは直立歩行にあるそうです。つまり、地面と言う臭いの宝庫から鼻を離したことで学習が不十分となり嗅覚の多くを失ったためです。ただし、我われが生きていく上で重要な上質な料理の香りを感じる能力や酒の香りをかぎ分ける能力は維持されているようです。この犬にも勝る嗅覚を維持・発達させるためにおいしい酒と美味しい料理を食べることで学習させることが重要なことだと思います。これは味覚も同じことが言えるようで、子供のころから美味しい料理で教育すると料理上手な人になるようです。

話を戻しますが、検疫探知犬は、先にも述べたように鳥インフルエンザや口蹄疫といった家畜の伝染病が日本へ侵入することを防ぐという重要な役割を担っています。また、海外から到着される方々に、身近で働く検疫探知犬をご覧いただくことで、動物検疫の存在を知っていただくことも大切な役割のひとつです。なお、検疫探知犬は多くの方に声をかけられると、集中力を欠いてしまいます。 検疫探知犬を見かけても手を触れず、遠くから見守ってくださいますようお願いします。

検疫探知犬