イヌとネコの寿命とワクチン

掲載日:2018.07.09

自分と関わりのあるヒトを含めた生き物が末永く生きて欲しいと願うのは人情というものです。とりわけ自分と生活を共にするイヌやネコは出来る限り健康で長く生きて欲しいと願うものです。しかし、残念なことに生き物にはそれぞれ持って生まれた寿命というものがあり、永遠の別れを経験する方も多いと思います。また病気で平均寿命を待たずして天寿を全うすることもしばしばです。そこで今回はイヌとネコの寿命に関する話題を提供したいと思います。

東京農工大学の林谷秀樹先生の研究グループは、以前から市中の動物病院の協力を得てカルテの記載内容からイヌとネコの寿命に関する研究を続けています。それによると、1990年当時、イヌの平均寿命は8.6歳で、ネコは5.1歳とされています。ところが2014年の調査によると、イヌは13.2歳でネコは11.9歳となっています。この24年間、実にイヌで1.5倍に、ネコで2.3倍に平均寿命が延びたことになります。ヒトでは考えられない延長率になります。この調査でイヌの場合、雑種の平均寿命は14.2歳であったものの、純血種で12.8歳と差があることも分かりました。これは以前から雑種は病気に対して抵抗性があるという風聞を科学的に明らかにしたものでした。また、ネコの場合、雄の平均寿命は11歳であるのに対し、雌は12.9歳であったそうです。ヒトも女性が男性より長寿であることが報告されており、やはり女性は子供を産むという解剖学的な宿命に対して、元来、生物学的な頑強さを進化の過程で獲得したのかもしれません。そうでなければ生命を維持・継続することは困難になるものと思われます。さらに寿命を既定する要因として死因に占める感染症の割合を調べたところ、イヌは1990年の約30%から2014年には約2.5%に激減し、ネコは約25%から約12%に減少したそうです。感染症を予防するワクチンの接種率をみると、イヌが約82%でネコは約54%であったそうです。このことを考えると、イヌやネコの平均寿命が延びた理由として感染症の制御が深くかかわっており、ネコはまだまだ寿命が延びる可能性のあることが分かります。

昔はイヌのワクチンといえば狂犬病や犬ジステンパー、それに犬伝染性肝炎程度であったものが、今やパルボウイルス、アデノウイルス、パラインフルエンザ、コロナウイルス、レプトスピラによる感染症のワクチンが種々の組合せで市販されています。またネコでは昔はワクチンの無い時代が長く続いたものの、最近では猫白血病、猫ウイルス性鼻気管炎、猫カリシウイルス感染症、猫汎白血球減少症、猫クラミジア病などのワクチンが市販されています。今後も新規のワクチン開発が進み、イヌやネコの寿命がさらに延びることも期待されます。

最近よく聞く言葉に健康寿命というものがあります。これは健康的で活動的に暮らせる期間をいいます。ご承知のように日本人の平均寿命は延び世界有数の長寿国になりました。最近の調査で、男性は健康寿命と平均寿命の差が9歳で、女性は12.4歳といわれています。今、公衆衛生では寿命を延ばすだけでなく、いかに健康で生活する期間を延ばすかに関心が高まっています。つまり、平均寿命と健康寿命の差をなくすことです。これはイヌやネコも同じことであり、少なくとも感染症を予防することで健康寿命を延ばすことができることから、平均寿命を延ばすとともに健康寿命を延ばすために、正しいワクチンプログラムによるワクチン接種の励行が鍵となるものと思います。イヌやネコを飼っている方は、どうかかかりつけの獣医師と良く相談の上、ワクチンの接種もれのないようにお願いいたします。