医師を対象とした抗菌薬適正使用アンケート結果

掲載日:2018.07.02

日本化学療法学会・日本感染症学会合同外来抗菌薬適正使用調査委員会は、全国の診療所の医師を対象とした抗菌薬適正使用に関するアンケート調査成績を、6月1日に岡山市で開催された合同学会で公表しました。そこで今回はその調査概要から医療における現状を紹介したいと思います。2016年に公表されたわが国の薬剤耐性(AMR)アクションプランは、外来における抗菌薬の適正使用の推進が明記しています。そこで抗菌薬処方の多くを占め、急性気道感染症の診療機会の多いと考えられる診療所での現状を知るために調査が実施されたものです。

全国の1490診療所にアンケート調査票を送り、269診療所(18.1%)から有効回答を得ました。AMRアクションプランを全然知らないが44.6%で、名前だけを知っているのが32.0%でした。感冒と診断した患者に抗菌薬を処方する機会は0~20%との回答が55.8%と最も多く、41%以上処方するとの回答が18.2%ありました。処方の理由は「重症化防止」27.7%、「細菌性二次感染の予防」24.0%、「ウイルス性・細菌性の鑑別に苦慮」22.7%でした。多く処方した抗菌薬は、マクロライド系32.2%、第3世代セフェム系29.3%、ペニシリン系17.4%でありました。抗菌薬の選択の理由(複数回答)は、「経口投与で効果」36.3%、「カバーが広い」34.1%、「使い慣れている」32.3%の順でした。感冒と診断した患者やその家族が抗菌薬を希望した際には、「説明しても納得しなければ処方」47.2%、「説明して処方しない」30.9%であり、「希望通りに処方する」は11.9%でした。臨床医が急性気道感染症に抗菌薬を処方することと耐性菌増加に「大いに」「少しは」関係があるとの回答が合わせて88.9%であり、個々の臨床医の抗菌薬適正使用が耐性菌抑制に効果があると回答したのは82.2%でした。回答者の95.2%が過去1年間に抗菌薬の適正使用を意識しており、52.0%が2020年までに抗菌薬の処方機会を10%以上減らすことが可能と回答しました。

以上のことから、AMRアクションプランの認知度は決して高くなく、患者などの希望により医師の約60%が抗菌薬を処方している実態が明らかにされました。一方、抗菌薬の適正使用は理解されており、多く医師は抗菌薬の適正使用を意識していることも分かりました。今後はアクションプランや抗菌薬の適正使用に関心の薄い医師や一般市民に如何に普及・啓発していくかが重要に思われました。なお、厚生労働省は平成30年度から感染防止対策加算を見直し、抗菌薬適正使用支援加算を新設して臨床医師を支援することになっており、抗菌薬の適正使用がさらに加速することが期待されます。

一方、獣医師の抗菌薬適正使用の意識はいかがでしょうか?前述のようなアンケート調査は公表されていませんが、獣医師周辺の話を聞くところによると臨床医師よりさらに意識が低いことが想像されます。世界的に獣医師に対しては、抗菌薬を使用すべきかどうかを十分検討した上で、抗菌薬の適正使用により最大限の効果を上げ、薬剤耐性菌の選択を最小限に抑えるように使用する「慎重使用」を推進することが求められています。農林水産省では、抗菌薬の慎重使用を推進するため、獣医師や生産者向けのパンフレットの作成や、「牛呼吸器病(BRDC)における抗菌剤治療ハンドブック」や「豚呼吸器病(PRDC)における抗菌剤治療ハンドブック」を作成し配布しています。しかし、いまだ十分には浸透していないようで、2020年のAMRアクションプラン最終年度までにどの程度の普及・啓発が進んでいるかが問われることになります。

 

 

農林水産省が実施しているリスク管理措置については、以下のサイトで公表しています。
http://www.maff.go.jp/j/syouan/tikusui/yakuzi/koukinzai.html