イヌとネコは致死性SFTSウイルスを媒介する

掲載日:2018.05.28

最近話題となっているイヌやネコなどの伴侶動物からヒトに感染する病気に、先のコラムでも紹介した「コリネバクテリウム・ウルセランス感染症」と今回紹介したい「重症熱性血小板減少症(Severe Fever with Thrombocytopenia Syndrome; SFTS)」があります。いずれも感染したヒトが死亡しており、伴侶動物を飼育する方にとっては知っておいていただきたい感染症です。

SFTSウイルスは2011年に中国で初めて報告されたもので、このウイルスによるSFTSはかって人類が経験したことのない新規の感染症になります。このような感染症を特に新興感染症と呼んでおり、そのほとんどがヒトと動物の共通感染症(人獣共通感染症)です。このウイルスは一般にダニ(フタトゲチマダニなど)の生活環で維持されていますが、時にウイルスを保有するダニに咬まれてヒトが感染します。またイヌやネコもダニに咬まれることで感染し、それらの動物と濃厚に接触することでヒトが感染します。感染したヒトと濃厚に接触すると、ヒトも感染すると言われています。症状は感染して1から2週間の潜伏期を経て、発熱、消化器症状が多くの症例で認められ、その他頭痛、筋肉痛、意識障害などの神経症状、リンパ節の腫脹、皮下出血や下血などの出血症状を示します。致死率は30~63%と非常に高いことが知られています。

日本では2013年1月に海外渡航歴のない方が感染したとの報告が最初です。したがって、すでにSFTSウイルスは国内に侵入していることになります。これまで317名(2018年2月28日現在)のヒトの感染が報告され、60名の方が亡くなっています。発症はダニの活動時期でもある5~8月に多く、西日本に多いことが報告されています。特に症例が多いのは、宮崎県、鹿児島県、山口県、高知県、愛媛県、広島県となります。このウイルスを媒介するダニは日本各地に生息しているにもかかわらず、このような地域性がある理由は不明です。有効な治療薬はなく主な治療は対症療法となります。本病を予防するワクチンも未開発です。

国内で飼育されているイヌのSFTSウイルスに対する抗体を調べたところ、1.3%(12/945)が抗体を保有していることが分かりました。またその一部にウイルスの遺伝子が検出されたことから、間違いなく感染していたと思われます。なお、抗体を保有するイヌは無症状でした。抗体を保有するイヌは西日本の地域でしたので、患者の発生と一致していました。ネコについてはまだ明確に抗体が陽性である個体は見つかっていないようです。ただし、2017年に西日本の女性が衰弱した野良ネコに咬まれた後にSFTSを発症し死亡しています。SFTSにネコが感染していたか不明ですが、血小板の減少などの症状があり、女性がダニに咬まれておらずネコから感染した可能性が高いとされています。また、同じ2017年に下痢などが続いて体調を崩していたイヌを看病していた飼い主がSFTSを発症し、イヌもSFTSと診断されました。幸いにその後ヒトもイヌも回復しました。イヌの看病でウイルスに汚染された唾液などを介して感染したものと考えられました。

以上にようにイヌやネコもSFTSに感染し、ヒトが看病などで濃厚に接触することにより唾液などを介して感染することを示しています。SFTSは極めて致死性の高い感染症であることから、イヌやネコが何らかの症状を示す場合は動物病院を受診することが必要です。無症状の動物を診断することは困難ですが、基本的に室内で飼育する場合は感染する可能性は低く、過剰な触れ合い(口移しで餌を与えるなど)を避けることが推奨されています。また、外出する場合はダニの駆除剤(フィプロニル製剤など)を使用するなどの対策が必要です。

なお、さらにSFTSの情報が必要な場合は、厚生労働省のホームページに掲載されている「SFTSに関するQ&A」が役に立ちます。
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou19/sfts_qa.html

(IASR Vol. 37 p. 51-53: 2016年3月号)