細菌が抗菌薬に耐性に成る仕組み

掲載日:2017.11.07

私たちの周りには数多くの細菌が生息しています。時に私たちの体の中で異常に増殖し、肺炎や下痢といった感染症を引き起こします。その時に治療に用いられるのが抗菌薬と言うことになります。患部で細菌は抗菌薬に漫然となすがままにされるのではなく、生き延びるために積極的に様々な仕組みを動員して抗菌薬の作用から逃れようとするのです。このように抗菌薬が存在しても細菌が増殖できる状態を「耐性」と呼んでいます。では細菌が抗菌薬に耐性になるのはどのような機構なのでしょうか?今回は細菌が抗菌薬に耐性に成る仕組みを解説したいと思います。

細菌が耐性になる仕組みを簡単な図に示しましたのでご覧ください。大きく分けて4つの仕組みが知られています。まず第一には、細菌が抗菌薬の活性をなくす酵素を産生することです。その酵素により抗菌薬が分解されたり、形を変えることにより、抗菌薬の作用が失われ細菌が生き延びることができます。この作用は強力でありますが、作用を及ぼす抗菌薬が酵素ごとに決まっていることが欠点です。次にそれぞれの抗菌薬には作用する細菌の部位が決まっていて、その数を増やしたり、構造に変化をきたせば抗菌薬が作用しなくなります。抗菌薬は細菌表層に存在するポーリンと呼ばれる孔形成タンパクを通過して細菌内部に侵入し作用を発揮します。この孔が狭くなったり、数が減少すれば細菌は耐性を示します。この孔はそもそも細菌の栄養分を外部から取り組む装置でもあります。最期に細菌は抗菌薬の内部への侵入を阻害するのではなく、積極的に内部の抗菌薬を外部に排出する仕組みである薬物排出ポンプを利用して耐性となります。これは多くの種類の抗菌薬に対応することが可能であり、多剤耐性化をきたす原因ともなります。これはそもそも細菌にとっての毒物を排出する仕組みでもあります。以上を見てみますと細菌は生存に必要な仕組みを巧妙に利用して人類の英知を結集して開発した抗菌薬に対抗していることに気づかされます。ヒトを含めて生物はこの地球に誕生して以来、「命を繋ぐ」術を本能として体内にインプットしているようです。