耐性菌時代における抗菌剤の用量を考える

掲載日:2018.05.01

耐性菌の出現要因で最も重要なことは、抗菌剤の誤用と過剰使用であると言われています。したがって、抗菌剤の適正使用、特に獣医領域では慎重使用が耐性菌の制御において非常に重要と考えられます。そこで今回は抗菌剤の動物への投与における用量について考えてみたいと思います。

動物用抗菌剤は、用量設定試験に基づき全て体重当たりの用量(mg/kg)が決められています。獣医師は投薬に当たってまず考えなければならないのが、患畜の体重をどのように測定するかということです。イヌやネコなどの小動物では体重を測定することはそれ程難しいことではありませんが、農家では家畜用の体重計がないことが殆どです。したがって、獣医師は家畜の体高や寛幅や胸囲から体重を推定する方法や月齢別標準体重値(kg)などを利用することが考えられます。しかし一般には獣医師が経験に基づく目見当で体重を推定して投与しているのが実態であると考えます。そこが体重の誤差、つまり不正確な投与量を生む原因となります。また、もし仮に体重が分かったとしても現在の抗菌剤の包装単位では、注射剤はそれなりに正確に投与できるものの、散剤では多すぎたりして、体重換算で使用するには不向きです。どうしても過剰使用になってしまう恐れがあります。さらに抗菌剤の中には体重当たりの投与量が幅で示されており、2倍量の幅で示されている抗菌剤も存在します。もし下限値で有効であると考えると上限を使用すると2倍もの過剰使用となるのです。

耐性菌時代を迎えて如何に抗菌剤の適正使用を推進するかを考えて、私見ではありますが、以下の用量の設定が現実的であると考えられます。それは医療において見られる大まかな年齢区分(成人、小児など)を利用した用量の設定です。例えば乳用牛では成牛(満24ヶ月齢以上)、育成牛(満4ヶ月齢以上、満24ヶ月齢未満)、子牛(満10日以上、満4ヶ月齢未満)などです。詳細な有効性に関する検討は必要であるものの、これであれば体重の誤差による投与を防げますし、対象動物を考慮した包装単位も可能で、過不足なく正確に投薬できることになります。この場合、投与量は幅ではなく一定値とすることが求められます。

以上、耐性菌時代を迎えて如何に適正に抗菌剤を使用するかの問題に対して、新しい用量の考え方を提案した次第です。用量の設定に関しては国がガイドラインを示した訳でもなく慣習的に体重当たりの投与量としてきたものであると考えられます。したがって、申請者の考えで設定は可能であると考えます。動物への投薬で過剰使用をできるだけ避けるために、新規の抗菌剤の開発に当たっては考慮していただければ幸いです。