本州のイヌでエキノコックス感染が確認

掲載日:2018.03.30

エキノコックス症は、世界的に重要な寄生虫性の人獣共通感染症です。ヒトはキツネやイヌの糞便に含まれる虫卵を経口的に摂取することにより感染します。感染してから年単位の長期間の潜伏期を経てから発症し、治療が困難な感染症であることから、イヌを飼育する家庭では知っておいて欲しい感染症です。従来はキタキツネが多数生息する北海道に限局した風土病でした。その理由は、毛皮と野ネズミの駆除目的で北方諸島から導入されたキツネが感染しており北海道の礼文島で発生したことです。また感染キツネが流氷に乗って北海道に侵入したと推定されています。今回、愛知県で捕獲した野犬56匹のうち3匹の糞からエキノコックスの遺伝子が検出されたとの報道がなされました(http://www.pref.aichi.jp/uploaded/attachment/264003.pdf)。このイヌが生きた虫卵を排出していたか明らかではありませんが、エキノコックス症が北海道から本州に拡大していることを示しています。因みに北海道でのイヌの感染率は約1%と報告されています。

エキノコックス症の主な原因は寄生虫で多胞条虫となりますが、数は少ないものの単胞条虫の場合もあります。ヒトの多胞条虫による感染症例は、これまで日本全体で500例近くあり、そのほとんどが北海道です。キツネやイヌは終宿主といわれ寄生虫の成虫が寄生する動物になります。感染すると虫卵を糞便に排出し、ヒトはその虫卵を経口的に摂取することにより感染します。また、虫卵が汚染した川の水を飲むことや、汚染地区の野菜を生で食べることで感染します。ヒトは中間宿主と言われ、幼虫が主に肝臓に寄生し嚢胞(寄生虫が入った袋状のもの)を形成し症状を示します。エキノコックス症の中間宿主はヒト以外では主に野ネズミとされてきました。しかし、最近はブタ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ラクダなども中間宿主と言われています。中間宿主同士が接触しても感染することはありません。キツネやイヌは主に野外で感染した野ネズミを食べることで感染します。

ヒトが虫卵を摂取すると感染後5~10年は無症状です。徐々に肝臓で病巣を形成し、肝機能障害が進みます。通常は発症後6ヶ月で重度の肝機能不全に陥り、黄疸や腹水や浮腫を併発し様々な臓器に転移して死亡します。ヒトでエキノコックス症が発見されるのは、肝 臓の画像診断で肝臓がんと間違われる場合があります。また臨床的あるいは血液検査で診断できます。治療は効果的な医薬品はなく、外科的に患部を切除することになります。ただし、症状が出た後では予後不良と言われています。一方、キツネやイヌは通常無症状です。多数寄生すると下痢や血液を含む粘血塊を排出する場合もあります。糞便検査や糞便内抗原検出で診断できますが、検査ができる施設は限られています。

イヌの治療はプラジクアンテル製剤が有効と言われています。また汚染地帯でイヌを飼育する場合は、放し飼いをしないことです。北海道の野ネズミの感染率は約30%と言われています。イヌが感染しても症状がありませんし、虫卵を肉眼でみることもできません。野ネズミを食べたなど、飼い犬がエキノコックスに感染している疑いがある場合は、獣医師に相談しましょう。確実な診断が可能ですし、駆虫薬の投与も可能です。また北海道などの汚染地帯では、むやみにキツネなどに接触しないようにし、虫卵に汚染した飲食物の摂取に注意して下さい。

エキノコックス症の感染経路

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