【論文掲載】Bacteriophage ΦSA012 Has a Broad Host Range against Staphylococcus aureus and Effective Lytic Capacity in a Mouse Mastitis Model (バクテリオファージΦSA012は黄色ブドウ球菌に広い宿主域を示すとともにマウス乳房炎モデルで効果的な溶菌活性を示す)

掲載日:2018.03.22

多剤耐性菌の蔓延が医療のみならず獣医療でも問題視されています。これまで耐性菌感染症に対して新規の抗菌薬を開発して対応してきましたが、暫くすると新たな耐性菌が出現するというイタチゴッコを繰り返してきました。したがって、感染症に対して抗菌薬に寄らない新たな治療戦略が求められているのです。その有力な治療薬の候補としてバクテリオファージ(ファージ)の応用に関する研究が世界的に活発に進められています。中にはすでに実用化されているものもあり、世界の感染症薬を製造販売する企業はファージ療法に関心を深めています。

酪農学園大学獣医学群では、獣医生化学ユニットの岩野英知教授を中心に全学的にファージ療法の応用に関しての研究に取り組んでいます。今般、乳牛で古くていまだ決定的な治療薬がない乳房炎に対してのファージ療法に関する基礎試験成績を公表したので紹介したいと思います。牛の乳房炎の起因菌として重要なのが黄色ブドウ球菌です。今回の研究で使用した黄色ブドウ球菌に対するファージΦSA12とΦSA039は以前の研究で共同研究者である東京工業大学の丹治保典教授が分離したものです。これらファージは40遺伝子型の93株の乳房炎由来黄色ブドウ球菌と6遺伝子型の6株のメチシリン耐性黄色ブドウ球菌を溶菌しました。また、マウスの乳房炎モデルを使用して実験したところ、ΦSA12の乳房への直接投与は乳腺組織の黄色ブドウ球菌の増殖と炎症を抑制しました。さらに投与経路を静脈内あるいは腹腔内に代えても乳腺組織の黄色ブドウ球菌の増殖を抑制しました。これらの成績は、ΦSA12が黄色ブドウ球菌あるいは多剤耐性黄色ブドウ球菌による牛の乳房炎治療の有用な医薬品になる可能性を示しました。

黄色ブドウ球菌には多数のファージ型があることが知られており、今回使用した広い宿主域を持つΦSA12でも単独で全ての黄色ブドウ球菌に対応することは困難であると考えられます。またファージに対する耐性菌の出現も知られています。さらに日本では起因菌を特定してファージ・ライブラリーから有効なファージを選定して治療に使用することは法律上できません。したがって、いくつかの有効なファージをカクテルすることにより広く乳房炎起因菌に対応することは可能であり、耐性菌を回避する可能性があることから、十分にこれらの問題は克服できると考えています。今後臨床応用に向けて、牛を使用した有効性を示す実証実験が必要と考えています。

Bacteriophage ΦSA012 Has a Broad Host Range against Staphylococcus aureus and Effective Lytic Capacity in a Mouse Mastitis Model, Hidetomo Iwano , Yusuke Inoue, Takuji Takasago, Hironori Kobayashi, Takaaki Furusawa, Kotomi Taniguchi, Jumpei Fujiki, Hiroshi Yokota, Masaru Usui, Yasunori Tanji, Katsuro Hagiwara, Hidetoshi Higuchi, Yutaka Tamura, Biology 2018, 7, 8; doi:10.3390/biology7010008