豚とヒト由来大腸菌におけるプラスミド性コリスチン耐性遺伝子の検出状況

掲載日:2018.01.30

2015年に中国で報告されたプラスミド性コリスチン耐性遺伝子mcr-1は極めて短期間に世界を席巻しました。わが国では2016年に外見上健康な豚の糞便から分離された大腸菌から低い頻度(0.02%)で検出されることが報告されています。また浮腫病や下痢を呈している豚の糞便から分離した大腸菌では13.2%という高率にmcr-1が検出されました。その後、プラスミド性コリスチン耐性遺伝子としてmcr-1加えmcr-2、mcr-3、mcr-4そしてmcr-5が報告されましたが、日本における検出状況は分かりませんでした。そこで我々は離乳後下痢を呈している豚と外見上健康な豚の糞便およびヒトの臨床材料から分離した大腸菌676株を用いて調べましたのでその結果を紹介したいと思います。ブレークポイントを>2mg/Lとして判定したところ、コリスチン耐性率は下痢豚由来株で60.8%(MIC50=4mg/L)、健康豚由来株で9.5%(MIC50=1mg/L)、ヒト由来株で1.0%(MIC50=1mg/L)であり、下痢豚由来株が極めて高い耐性率を示しました。これは治療用として硫酸コリスチンが汎用されている結果、選択圧として機能したためと考えられます。

下痢豚由来大腸菌120株の内、mcr-1が36株(30.0%)、mcr-3が10株(8.3%)、mcr-5が34株(28.3%)が検出されました。したがって、mcr-1が局在するプラスミドの拡散の主な原因として下痢豚での高頻度のmcr-1保有と関連があると思われました。今回、MICが高い株の中にmcr-1mcr-5が併存する株が4.2%に認められました。また、健康豚由来の1株(2.4%)にも併存例が観察されました。これらの結果は、mcr-1と同様にmcr-3mcr-5が高頻度で下痢豚由来大腸菌で検出されることを示しました。mcr-2mcr-4は欧州での状況と異なり、どの株からも検出されませんでした。

mcr-1陽性の大腸菌のMICは≧8mg/Lでした。また、mcr-3mcr-5陽性株の多くのMICは4か2mg/Lであり、コリスチン感受性に及ぼすmcr-3mcr-5の影響は、mcr-1より弱い傾向にありました。さらにmcr-1mcr-5を併存する株のMICは≧16mg/Lであり、複数のmcr遺伝子を持つことによる相乗的な影響と思われました。しかし、この相乗的影響についてはさらに検討する必要があるものと思われました。

以上の結果は大腸菌の由来によってmcr遺伝子の保有状況がことなることからOne Healthによる薬剤耐性モニタリングによって動向を監視する必要があることを示しています。

 

 コリスチンの薬剤感受性とプラスミド性コリスチン耐性遺伝子の分布状況

 

Fukuda A., et al.: High prevalence of mcr-1, mcr-3 and mcr-5 in Escherichia coli derived from diseased pigs in Japan, Int J Antimicrob Agents 2017 Nov 26.

doi: 10.1016/j.ijantimicag.2017.11.010.