【論文掲載】Effect of antimicrobial exposure on AcrAB expression in Salmonella enterica subspecies enterica serovar Choleraesuis

掲載日:2018.01.22

今般、獣医学類食品衛生学の臼井優准教授が筆頭著者で動物薬教育研究センターの田村が共著者の論文がFrontiers in Microbiology のeBookである「Mechanisms of Antibiotic Resistance」に掲載されて公表されました。そこで本論文の概要を紹介したいと思います。また、このeBookには多くの関連する論文も掲載されていることから、この分野に興味をお持ちの皆様には参考になるものと思います。

 

薬剤排出システムは細菌が抗菌薬に対して耐性を示す機構の一つです。最近の研究からこのシステムは薬剤耐性のみならず細菌の病原性発現にも関与することが分かっています。細菌のゲノム上にコードされている薬剤排出システムは通常の培養条件下では発現していません。しかし、何らかの要因で発現誘導されると、細菌は薬剤耐性化、特に複数の抗菌薬を排出するため多剤耐性化する可能性があります。したがって、耐性菌を制御するためには排出システム発現制御ネットワークの解析が重要となります。

Salmonella Choleraesuis(SC)は、豚のサルモネラ症の起因菌で食肉を介してヒトにも感染する可能性があります。ワクチンは市販されておらず抗菌薬による治療が重要となります。Salmonellaの薬剤耐性機構として薬剤排出システムの内、RNDファミリーであるAcrABが重要とされています。そこで本研究では17株のSC野外分離株について定量的PCR法によりacrBと複合発現制御遺伝子(RamA, SoxS, MarA, Rob)の発現レベルの関連を調べました。分離株の8株はacrBの発現を上昇させました(p<0.01)。acrBの発現した株の1株はramAと、1株はsoxSと、6株は両方の遺伝子と関連しました。acrBの発現における抗菌薬の効果を調べるために、5株のSCに由来する変異株を抗菌薬含有する寒天平板での培養により選択しました。acrBramAの発現はAcrABの基質であるエンロフロキサシン、アンピシリン、オキシテトラサイクリン、カナマイシンによる変異株でそれぞれの親株より高いものでした(p<0.01)。4つの抗菌薬の内、ramAの発現レベルはエンロフロキサシンとアンピシリンで選択した変異株で、オキシテトラサイクリンとカナマイシンでの変異株より有意に高いものでした(p<0.01)。しかし、スペクチノマイシンで選択した変異株でacrBと複合発現制御遺伝子の発現はそれぞれの親株と同様でした。これらの成績はSCへのAcrABの基質である抗菌薬の暴露はRamAを介したAcrAB薬剤排出システムの活性化を促進することを示唆しました。したがって、サルモネラ症で良く使用されるフルオロキノロン薬は症状を改善するものの、多剤耐性を促進する可能性があり、慎重に使用する必要のあることを示しています。

Usui M, Nagai H, Hiki M, Tamura Y, Asai T: Effect of antimicrobial exposure on AcrAB expression in Salmonella enterica subspecies enterica serovar Choleraesuis,  Mechanisms of Antibiotic Resistance, edited by Lin J, Nishino K, Roberts MC, Tolmasky M, Aminov RI and Zhang L, p.188-193, Frontiers in Microbiology.