犬および猫に使用実績がある人用医薬品の動物用医薬品としての転用

掲載日:2018.01.15

犬と猫を中心とする伴侶動物は人と同じ生活の場で飼育されることが多く、人との距離が最も近い動物と言えます。したがって、動物が保有する耐性菌が糞尿から人に伝播することは容易に想像できますし、そのような文献報告も見受けられます。また、伴侶動物に使用される抗菌薬のほとんどが人体用医薬品であり、経験的に適応外使用されている実態があります。伴侶動物に由来する薬剤耐性菌の動向や使用する抗菌薬の使用量も全く不明なのです。現在、地球規模でのOne healthに基づく耐性菌対策を実施する場合のブラックボックスになっているのです。そこで2016年に公表されたわが国の抗菌薬耐性対策アクションプランでも伴侶動物に係る薬剤耐性モニタリングの実施が指摘されているのです。アクションプランを受け農林水産省は伴侶動物由来薬剤耐性菌のモニタリングを開始することを明言していますし、人体用抗菌薬の使用実態の調査も考慮しているようです。しかし、伴侶動物で適応外使用される人体用抗菌薬の実態調査は困難が予想されます。

伴侶動物で使用される抗菌薬の適正使用を推進するには、薬機法に基づいた承認された伴侶動物用の抗菌薬を使用するに尽きるように思われます。しかし、現実は人体薬が安価に入手できることから、製薬企業がなかなか新規の開発に着手できない状況にあります。そこで農林水産省は2014年に獣医療現場で汎用されている人体用医薬品を伴侶動物用医薬品として製造販売承認申請する場合にあっては臨床試験資料について特例を認めています(26消安第2173号 平成26年8月4日)。これは汎用される人体用医薬品は獣医療現場において、その有効性や安全性が獣医療上の公知と考えられる程の豊富な臨床経験や文献報告等が蓄積されていることを理由としています。しかし、残念ながらまだこの画期的な制度を利用した動物用医薬品が承認されていないことから、耐性菌時代を迎えて改めて内容を紹介し、抗菌薬について制度の利用をお願いしたいと思います。

制度の内容としては承認申請に必須とされている臨床試験資料の添付に係る特例として、国内の臨床経験を取りまとめた使用実態調査及び国内外の臨床経験に基づく文献情報等を取りまとめた資料をもって臨床試験資料に代えることができるものです。ただし、生物学的製剤と新キノロン系等製剤は除外とされています。本制度を利用して承認された動物用医薬品については、承認後2年以内に有効性及び安全性に関する情報を収集し、その結果を農林水産省動物医薬品検査所長に提出することになっています。提出された情報を審査した結果、検証が必要と判断された場合は、国内1カ所以上の施設で製造販売後臨床試験を実施することになっています。

以上の制度は製薬企業にとっても低予算で新薬の開発を推進するメリットがあるとともに、承認薬を伴侶動物に使用することにより、使用量の把握など法律に基づいた管理や規制が強化できることになります。特に伴侶動物分野における耐性菌対策の一つとして是非とも本制度の活用をお願いしたいものです。