臨床試験と治験

掲載日:2018.01.09

読者の皆さんが病気に罹って医師に診察を受けた時に、臨床試験や治験への参加を尋ねられたことはないでしょうか?この似たような言葉は同じことを言っているわけではありません。今回は獣医療でも関連するこの言葉の意味について獣医療を中心に解説したいと思います。

まず大きな枠組みとしては、病気の原因や予防や診断や治療方法の開発を目的として、対象とする動物に対して行われる研究を臨床研究と呼びます。臨床研究の内、薬剤、治療法、予防法などの安全性と有効性を評価することを目的としたものが臨床試験となります。臨床試験では候補となる薬剤を投与し、その効果や影響を評価する試験で、現在の治療と比べて安全か有効かを科学的に評価します。新たに開発される薬剤は、どのような副作用を生じるのか、本当に効果があるのか分からないため、臨床試験が不可欠なものとなっています。臨床試験の内、新しい薬剤や医療機器の製造販売の承認を「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(薬機法といわれ、以前の薬事法です)に基づいて国から得るために行われるものが治験です。したがって、治験も臨床試験の一種と言えます。治験は動物の安全を守り、データの信頼性を確保するために薬機法およびGCP(Good Clinical Practice)に則って実施されます。

一般的に人体用医薬品の臨床試験では、3段階で実施されます。第1段階は第1相試験(フェーズ1)と呼ばれ、少人数の患者を対象に安全性や体内動態(薬物の吸収、分布、代謝、排泄)などを調べ、最適な用法・用量を確認します。次に30~80人を対象とした第2相試験(フェーズ2)で、先に確認した用法・用量で有効性と安全性を調べます。最期に第3相試験(フェーズ3)では、100~1000人の患者を対象に、標準治療やプラセーボ(偽薬)との比較を行い、そこで有効性と安全性が確認されれば承認申請をすることになります。一方、動物用医薬品では、人体用のような段階を踏みませんが、臨床試験の実施にあたって、あらかじめ毒性試験、安全性試験、用量反応試験、残留試験等の非臨床試験を実施し、動物用医薬品としての有効性が期待できると判断された薬物のみを試験対象とします。

症例数は一般に60頭以上で、鶏は200羽以上とされています。

人でも動物でも医薬品を新規に承認されるためには、治験により医薬品の対象とする人や動物で安全性や有効性が確認されてから申請されるのです。したがって、医薬品の開発は多くの時間とお金のかかる作業であり、できる限り長期間に渡って使用できるよう適正使用に心掛けて欲しいものです。

注)GCP: 動物用医薬品の臨床試験の実施に関する基準(GCP省令)のこと。臨床試験を倫理的・科学的に行い、責任体制を明らかにしようとするもの。