耐性菌はどのように調べるのか?

掲載日:2017.11.21

耐性菌はこれまで薬剤耐性菌あるいは抗菌薬耐性菌など様々な言葉で言い表されて、新聞などのマスメデイアで一般的な言葉として使われてきました。しかし、正確な意味や定義を多くの方は理解していないのではないかと思います。薬剤耐性の定義に関しては、世界保健機関(WHO)は「治療量の抗菌薬の存在下でも、増殖または生残を継続する微生物の能力」としています。つまり細菌に対して感染症治療のための抗菌薬の効果を失う現象です。またWHOによれば薬剤耐性は抗菌薬の使用により加速する自然現象とも言っています。以前にも触れましたが、細菌は生き物ですので我々と同じように命を繋ぐという本能を生来持っており、抗菌薬という外敵に対しても生き延びる術を身につけていると言って良いと思います。

では、細菌に対して治療量の抗菌薬濃度とはどのように測定するのでしょうか?これは通常、薬剤感受性試験と呼ばれている方法により試験管内で測定します。良く用いられるのはディスク法と呼ばれるもので、紙製のディスクに一定濃度の抗菌薬を染み込ませ、調べようとする細菌を寒天培地の表面に塗布した上にディスクを静置して、ふらん器内で培養します。次の日にディスクの周りに形成された細菌の阻止円(発育が阻害されディスクの周りに細菌が発育しない)の大きさで耐性か感受性かを判断するものです。細菌が調べようとする抗菌薬に耐性であれば阻止円がないか小さくなり、感受性では大きくなります。これは安価で簡単に出来ますが、動物用抗菌薬のディスクが少なく、耐性か感受性の判定基準も明確ではありません。この方法を臨床獣医師は使用する抗菌薬の選択に利用しています。細菌が感受性を示す抗菌薬の中から、獣医師は病状に適した最善の抗菌薬を選択して投与します。これには多くの知識や経験が必要であり、飼い主が素人判断で対応できるものではありません。

正確に測定するには希釈法といって、液体あるいは寒天培地に希釈した抗菌薬を混合し、希釈ごとに細菌を接種して培養し、細菌の発育を阻止した最小の抗菌薬の濃度を求めます。これを最小発育阻止濃度(MIC)と呼んでいます。しかし、使用した細菌のMICを測定しても、それが耐性なのか感受性なのかは分かりません。そこでその区別をする値を耐性限界値(ブレークポイント)と呼んでいます。アメリカの公的機関などがブレークポイントを公表していますので、その値を見て、MICがそれ以上であれば耐性と判断します。このブレークポイントが先の治療量の抗菌薬濃度となります。本来なら臨床で求めることが相応しいのですが、残念ながら公的な動物でのブレークポイントは公表されていません。

これまで細菌が耐性であるか否かを判断する方法を述べてきました。ここで注意が必要なのは、耐性菌と判断された細菌でも抗菌薬の濃度を高めれば発育が阻止されることです。つまり耐性は絶対的な概念ではなく相対的なものと言えます。しかし、臨床でむやみに抗菌薬の濃度を高めることは慎む必要があります。これは予期しない副作用を招く恐れがあるからです。したがって、食用動物では残留の問題もあることからデータに裏打ちされた用法・容量を厳守することが必要です。

 

ディスク法による薬剤感受性試験

寒天平板希釈法による薬剤感受性試験