うがいは風邪を予防するか?

掲載日:2017.10.10

風邪の原因にはウイルス、細菌、クラミジアやマイコプラズマなどが知られていますが、成人の場合その大部分はウイルスによるものと言われています。特に重要なのはインフルエンザウイルスによるものです。風邪の流行する冬になるとテレビや新聞などのマスメデイアでは、予防対策として人混みへの外出を避けるとともに、外出から帰宅したら「うがい」と「手洗い」の励行を呼び掛けています。今回はこの「うがい」の効果について気になる文献を紹介したいと思います。

風邪の予防対策としての「うがい」は当たり前のように行われていますが、その有効性は必ずしも検証されていないようです。当然のことながら市販うがい液と風邪の原因ウイルスを試験管内で反応させると死滅することは確認されています。しかし、風邪の予防効果となると別の話しなのです。京都大学健康科学センターでの成績を紹介すると、全国から387名のボランテイアを募り、くじ引きで「水うがい群」、「ヨード液うがい群」および「特に何もしない対照群」の3群に分け、2か月にわたって風邪の予防効果を検証したのです。その結果、対照群では1ヶ月当たり100名中26.4人が発症したのに対し、「水うがい群」は17.0人、「ヨード液うがい群」は23.6人が発症しました。

このことは「水うがい群」に最も予防効果が認められ、「ヨード液うがい群」は風邪予防効果がないことを示しています。したがって、水によるうがいには原因ウイルスを洗い流す効果があるのに対し、ヨード液には咽喉にある常在細菌叢を撹乱したり、正常な粘膜細胞にダメージを与えたことが考えられます。なお、このことを受け青森県では風邪の予防対策として積極的に帰宅時のうがいを推奨していないと聞きました。

この研究論文を読み、改めて殺菌消毒成分を含有するうがい薬の添付文章を確認してみました。そうすると、その効能・効果は、「口腔創傷の感染予防、口腔内の消毒」とされており、「風邪の予防効果」となっていないことに気が付きました。製造・販売企業は、当初から「風邪の予防効果」を標榜していないのです。しかし、「風邪の予防効果」を期待して使用する実態があり、先に述べた研究報告がなされた以上、製造・販売企業は科学的な臨床試験により「殺菌消毒成分を含むうがい薬」の風邪の予防効果を検証する必要があるものと思われます。

 

Satomura K, Kitamura T, Kawamura T, Shimbo T, Watanabe M, Kamei M, Takano Y, Tamakoshi A, Great Cold Investigators-I:
Prevention of upper respiratory tract infections by gargling: a randomized trial.
American Journal of Preventive Medicine   29(4) 302-307   2005.