薬剤耐性遺伝子はどこから来たのか?

掲載日:2017.09.21

人類最初の抗生物質であるペニシリンの耐性菌はペニシリンンが一般に広く使用される1945年の前の1940年に発見されたことをすでに紹介しました。多くの皆さんは耐性菌というものは、抗生物質が広く使用されてから出現されると考えていることと思います。そうするとペニシリン耐性菌の出現はどのように理解すれば良いのでしょうか?偶然の発見と片づけて良いのでしょうか?残念ながら、この現象の解明には長い期間要することになりました。

最近のゲノムサイエンスの発展は目を見張るものであることを承知していると思います。すでにヒトゲノムの完全解読に成功し、生命システムの解明という次のステージへ進みつつあります。当然、細菌のゲノムサイエンスも進展し、多くの菌種の全ゲノム解読が終了し公表されています。このゲノムサイエンスの発展に随伴し、薬剤耐性菌の出現の謎も解明されたのです。

図は人の院内感染起因菌として重要なバンコマイシン耐性腸球菌(VRE)のデータを示しています。VREにはいろいろな型が知られており、その中で重要な型がa) VanA型とb) VanB型と言われています。そのバンコマイシン耐性遺伝子は3つの遺伝子から構成されています。図のc)とd)はバンコマイシン産生菌のゲノム構造の一部で、バンコマイシン耐性遺伝子と同様に3つの遺伝子を保有していることが分かりました。つまり、バンコマイシン耐性遺伝子のルーツはバンコマイシン産生菌の染色体上にあったのです。これは良く考えてみれば生物学的に当然のように思われます。自分が産生する抗生物質に対して防御する術を身に着けていることは、本能的に生命を維持する観点から考えて当然であると思われるのです。毒蛇は自分自身を咬んでも死なないのです。

このことは今後新規に開発されるであろう抗生物質に対しても、すでに耐性菌は地球上に存在することを意味します。抗生物質の使用は、単に既存の耐性菌を選択・増殖させるだけであり、慎重にも慎重に取り扱うことが求められるのです。細菌は抗生物質に依存する愚かな人類をあざ嗤っているように思われてなりません。