投与経路のはなし

掲載日:2017.09.12

投与経路とは、薬を動物体内に送り込むための方法と経路を言います。動物では注射剤として静脈内、筋肉内、皮下などに獣医師が注射器で投与します。これは迅速に患部に薬を到達させるには良い方法ですが痛みを伴うのが欠点です。我々人間と同じように動物も痛いことは嫌なわけで出来るだけ痛みの伴わない方法が望まれます。そこで汎用されるのが経口剤で錠剤や散剤などを直接口に入れたり、飲水や飼料に入れて経口的に投与されます。ただし、良薬口に苦しでしばしば動物は経口剤を嫌うことがあります。また、食欲もなく吐き気を催している場合はさらに投薬が困難になります。そこで最近、経皮的に投与する薬も開発されています。犬猫のノミ・ダニ対策に用いられるスポット・オン(spot on)剤やスプレー剤などです。また牛の駆虫薬を背中に滴下するポア・オン(pour on)剤も開発されています。牛に投薬させるには1頭ずつ取り押さえる必要があり多大な労力と時間を必要としますが、細い通路を歩かせて背中に滴下する方法は画期的でした。さらに眼や耳の感染症には点眼剤や点鼻剤もあります。薬を徐々に浸透させるために皮下に埋め込むインプラント剤や、承認はありませんが、牛の第二胃に薬を留置させるボーラス(bolus)投与剤も知られています。

それ以外の投与経路として鶏痘生ワクチンでは翼にワクチンを穿刺するものもあります。また外部寄生虫の駆除薬を牛の耳標に練り込み、牛同士の接触によって体表に広がるものもあります。さらにハエ幼虫発育抑制剤で従来落下した糞便に直接散布する製剤を餌に混ぜて投与し、農家の省力化を図る方法をフィードスルー(feedthrough)と呼びます。当然、薬の腸管からの吸収がなく残留に問題のない製剤に適応されます。

医薬品の開発といえば新しい成分の新薬を考えがちですが、製薬企業にとって動物の苦痛を緩和し、省力化に貢献する投与経路の開発も重要なテーマとなっています。