最初に耐性菌の蔓延を予言したのは?

掲載日:2017.08.04

1928年に偶然の出来事から最初の抗生物質であるペニシリンを発見したのは、皆さんご存知の細菌学者であったAlexander Flemingです。当初から人での臨床応用を考えていたのですが、培養液に含まれる毒性物質のために諦めていました。その後、1940年に生化学者のHaward W FloreyとErnest B Chainはペニシリンの単離に成功し、人での臨床効果を確認しました。ここからは早くて1945年にはペニシリンの工業生産に成功し、人における大規模な臨床応用へと進展しました。日本でもほぼ同じ時期にペニシリンの工業生産が開始し、「碧素」という名称で応用されています。まさに日本の発酵工学のレベルの高さを示す出来事になりました。このペニシリンの発見と臨床応用に関して1945年にFlemingとFloreyとChainの3名に対してノーベル医学生理学賞が授与されました。

ところで皆さんの多くは、抗生物質の臨床応用された後に薬剤耐性菌が出現すると考えていることと思います。しかし、最初にペニシリン耐性菌が検出されたのは、一般的に人に応用される前の1940年と言われています。このことを憂慮したFlemingはノーベル賞受賞講演の中で、「ペニシリンが商店で誰でも買うことができる時代が来るかもしれない。そのとき、無知な人が必要量以下の用量で使用して、体内の微生物に非致死量の薬剤を曝露させることで、薬剤耐性菌を生み出してしまう恐れがある。」と述べています。つまり、最初に耐性菌の蔓延を予言したのは、なんと最初の抗生物質の発見者であったFlemingであったのです。今、耐性菌対策として盛んに言われている抗菌薬の適性使用についての重要性を指摘していたのです。歴史に名を残す偉大な研究者は、画期的な発見をするのに留まらず、未来への警鐘も忘れなかったことに唯々感服せずにはいられません。